【令和4年度】 教育・学習支援業における精神障害・自殺事案の解析
研究要旨
この研究から分かったこと
教育・学習支援業においては、女性の割合が増えており、男女ともにいじめ・嫌がらせへの対策が重要である。自殺の事案のなかでは、男性が多く、初回の自殺企図で既遂に至っている事案が多いことから、自殺対策の推進が喫緊の課題であると考えられた。
目的
教育・学習支援業は、過労死等が多発している業種とされており、これまでの過労死等事案研究(平成22-26 年)の報告では、性別は男女ほぼ半数ずつで、うつ病エピソードの割合が最も多く、死亡(自殺)の事案が1 割であると報告されている。さらに、心理的負荷が生じた出来事としては「恒常的な長時間労働」の割合が最も高く、具体的出来事では「上司とのトラブルがあった」が最も多いとされている。本研究は、過労死等が多く発生していると指摘されている教育・学習支援業を対象に、精神障害の予防を目的とした詳細分析を行うものである。
方法
教育・学習支援業を分析対象とした。これまでのデータベースに、直近5 年間(平成27-令和元年)の教育・学習支援業における過労死等事案を追記して基礎集計を行い、さらに平成30 年以降の25 件の調査復命書を精読し、性別、年齢、心理的負荷が生じた出来事などの分析を試みた。
結果
性別は、男性56 件(47.1%)、女性63 件(52.9%)であり、女性の事案が増加傾向であった。また年齢は30 歳代の割合が45 件(37.8%)と高かった。死亡(自殺)の事案は12 件(10.1%)であり、そのなかでも男性が10 件(83.3%)を占めていた。精神疾患名は、F3 が59 件(49.6%)、F4 が60 件(50.4%)とほぼ同程度であった。業務による心理的負荷では、男性は恒常的な長時間労働が22 件(39.3%)と主な要因であるが、嫌がらせ・いじめが増加傾向であった。女性は特別な出来事(強姦等)、恒常的な長時間労働も多いが、嫌がらせ・いじめが13 件(20.6%)であり依然として多く見られた。
考察
教育・学習支援業においては、長時間労働の改善が課題であり、それらに関連する負荷業務の対策が必要である。また、いじめ・嫌がらせへの対策の重要性も示唆された。さらに、男性の就労者に関しては、自殺の事案数が多く、初回の自殺企図で既遂に至る事案が多いことから、自殺対策の推進が喫緊の課題であると考えられる。
キーワード
教育・学習支援業、精神障害、自殺
執筆者
髙橋有記