【平成28年度】 脳・心臓疾患による労災認定事案の分析に関する研究
研究要旨
業務上の脳・心臓疾患として労災認定された事案のデータベースを構築し、データベースを用いて過労死等の防止対策に向けて、とりわけ業種別にみた労働条件の特徴を抽出することを目的とした。
データベースを構築した1,564件を分析対象とした。事案は男性が全体の95%以上を占め、雇用者100万人当たりの事案数は、発症時年齢で50-59歳、従業者規模で10-29人に最も多かった。疾患別には100万人当たりの事案数は脳疾患で3.7件、心臓疾患で2.3件であり発症時年齢の分布は両疾患で傾向が変わらなかった。労災認定要因は長期間の過重業務によるものが93%であった。発症業種別の分析からは、100万人当たりの認定事案数が多い上位5業種は、①漁業、②運輸業・郵便業、③建設業、④宿泊業・飲食サービス業、⑤サービス業(他に分類されないもの)であった。これらの業種では労働時間以外の負荷要因が多く認められるとともに、業種ごとの労働条件の違いも明確に示された。時間外労働時間管理を主としつつ、労働時間以外の負荷をより詳細に評価し、負荷要因の異なる業種ごとの対策の重要性が示唆された。