【令和4年度】 トラック運送業における運行パターンの定量解析と運輸小規模事業場の特徴

  • 令和4年度
  • その他
  • 労災事案分析
  • 重点業種

研究要旨

この研究から分かったこと

運行の個人パターンとその安定性は、ドライバーの運行の特徴を表現していた。Web 調査から、一概に小規模事業場だから労働環境の整備や健康管理に問題があるとは言えないことが分かった。今後は大規模事業場の実態と比較しての研究が重要と考えられた。

目的

デジタルタコグラフ(以下「デジタコ」という。)データをパターン分類し、ドライバー個人のパターン推移に焦点を当て、その特徴を抽出することに取り組んだ。運行パターン分析を深化させ、対策研究に結び付けるためには、働き方、運行管理、健康管理の実態解明が重要である。トラックドライバーを対象とした従来の調査では、事業場の規模別の分析は行われておらず全体像をとらえた分析が主流である。その反面、トラック業界関係者からは、小規模事業者における問題が指摘されている。そこで、本研究では、トラック運送業における過労死等事案の要因及び特徴を抽出し、対策立案に繋げるために、小規模事業場(従業員数30 人以下 )のトラックドライバーに焦点を当てて、デジタコデータに基づく運行パターン及びWeb 調査による分析を進め、小規模事業場のドライバーの労働環境と健康管理の実態を明らかにすることを目的とした。

方法

デジタコデータを元に、各運行を運行8パターンに分類した。個々のドライバーについて、各月の運行パターンの中の最頻出パターンを個人パターンとした。さらに、運行月数に対する個人パターンの占める割合、及び対象期間中の出現運行パターン個数を、個人パターンの安定性とし、その特徴を抽出した。労働環境と健康管理に関する質問紙を作成し、Web 調査を実施した。

結果

最頻出の運行パターンと個人パターンには相違があった。個人パターンの相違により、個人パターンの安定性にも違いが見られた。Web 調査の結果では、当初の予測に反して、小規模事業場で働くトラックドライバーの労働環境が健康に与える影響は少ないものと考えられた。しかし個人事業主は健康診断の受診をしている人が少なく、事業規模が小さいほど健康診断の制度がないところが多いことが判明した。

考察

運行パターンについて今後は個人パターンと業務の過重性との関連について検討する。Web 調査の結果からは、健康診断の受診と制度について、対策の必要性が示唆される。

キーワード

デジタルタコグラフデータ、運行パターン、Web 調査

執筆者

酒井一博

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