【平成30年度】 脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定事案の解析-7年間(平成22~28年度)の経年変化-
研究要旨
平成22~28年度の7年間の脳・心臓疾患及び精神障害の労災支給決定事案についてデータベースを構築して解析し、性別・年齢、疾患名、業種・職種、健康管理状況等及び出来事別の経年変化を検討することを目的とした。特に、脳・心臓疾患事案では規則・規程や健康管理の状況、精神障害事案では出来事(業務による心理的負荷)、両事案のICD-10に基づいた被災時の疾患名については初めての報告である。
データベース構築は、(1)厚生労働省が「過労死等の労災補償状況」で公表しているデータ及び調査復命書等の提供を受け、データ整理・電子化・入力により平成27~28年度データベース(脳・心臓疾患511件、精神障害970件)を作成、(2)平成22年1月~同27年3月の調査復命書等を全国の労働局及び労働基準監督署から収集して作成したデータベース(脳・心臓疾患1,564件、精神障害2,000件)と厚生労働省が「過労死等の労災補償状況」で公表している平成22~26年度のデータを突合し、平成22~26年度データベース(脳・心臓疾患1,516件、精神障害2,041件)を作成、(3)上記(1)と(2)を結合した。
平成22~28年度データベースは脳・心臓疾患2,027件、精神障害3,011件である。脳・心臓疾患事案については、男性が95%超、発症時年齢は40歳以上が8割超、脳血管疾患が約6割で心臓疾患が約4割、最も多い疾患は脳内出血で約3割だったが年度による顕著な差は見られなかった一方、被災者の事業場が就業規則及び賃金規程を有する割合、健康診断及び面接指導の実施率は近年増加傾向であった。精神障害事案については、男性が7割弱、発症時年齢は男女とも30~39歳で最多、自殺事案では95%超が男性、最も多い疾患はうつ病エピソードで4割超だったが年度による顕著な差異は見られなかった一方、出来事の「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事」や「2週間以上にわたる連続勤務」「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行」などが近年増加傾向であった。
以上の結果を踏まえ今後の過労死等防止対策のさらなる推進及び対策の評価を進めるうえで、継続的かつ詳細な業務上事案のモニタリングは重要である。