【平成30年度】 メディアにおける労災認定事案の特徴に関する研究

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  • その他
  • 労災事案分析
  • 重点業種

研究要旨

2018年に見直しが行われた「過労死等防止のための対策に関する大綱」で過労死等の多発が指摘されている業種として建設業とともにメディアが新たに加えられた。本研究では過労死等防止調査研究センターが作成したデータベースを用いて平成22年1月から平成27年3月のメディアの脳・心臓疾患事案22件、精神障害事案30件を分析対象とし、実態と背景要因及び防止対策を検討することとした。

その結果、脳・心臓疾患の事案では、発症時平均年齢と死亡時平均年齢がともに全業種よりも低かった。発症時年齢は30歳代の事案が目立った。発症前6か月間の時間外労働時間数の平均時間は、全業種と大差はなかったが長時間に及ぶものであった。また、労働時間以外の要因は、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務が多かった。本人の申告による出退勤の管理が他業種と比較して多かった。精神障害の事案では、発症時平均年齢と死亡時平均年齢は全業種よりも低く、自殺事案は全て20歳代であった。特別な出来事のうち極度の長時間労働と恒常的な長時間労働の事案が多く、具体的出来事では長時間労働に関する出来事が全業種よりも高い割合であった。また、上司や同僚とのトラブルの事案も多かった。脳・心臓疾患と精神障害の事案の両者において、他の業種よりも際立って若年齢層で疾患を発症しており、死に至ることもあった。また、長時間労働による過重負荷や対人関係の問題も浮かび上がった。

本研究の結果、メディアについては、現在提案されている長時間労働対策とともに、若年労働者の過重労働や対人関係に関する問題、発注者側からの無理な業務依頼に着目した過重労働防止対策の強化が重要であると考えられる。

執筆者

菅 知絵美

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