【令和2年度】 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)コホート研究
研究要旨
JNIOSHコホート研究は国内の企業などに勤務する2万人ほどの労働者集団(コホート)を構築した上で、長期(5~10年)にわたる追跡調査を行う職域大規模調査研究である。その最終目的は、過労死等関連疾患(脳疾患、心疾患、精神障害等)の発症リスクに影響を及ぼす労働環境要因や身体・生活環境要因の同定とその影響の程度を評価することである。本年度は協力企業の継続した研究参加を促し、各企業の参加者より提供されたベースライン調査データを結合し、数か月~半年にわたる平均労働時間と平均労働時間算出期間の後に測定された健康指標、心理的指標、睡眠指標との関連を解析した。
2020年10月時点で入手できたベースラインデータより企業労働者計11,313人を対象とした解析を行った結果、健康診断指標ではBMI、収縮期血圧、拡張期血圧、ALT、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪と平均労働時間との間に関連がある可能性が示唆された。ストレスチェック指標では心理的ストレス反応との関連が示唆された。また睡眠状態に関する質問との関連では、睡眠不足や入眠までの時間、起床時疲労感、仕事中の眠気との有意な関連が示唆された。
本年度はコロナの影響でデータの提供数が予定より少なかったものの、2020年10月時点でのベースライン調査データの解析を実施することができた。今後の課題は、研究参加企業及び参加者の参加継続の維持である。参加企業に調査参加による社会的意義を理解していただくためにも、今後も継続して本研究結果に関する情報発信を学会発表等により積極的に行う。