【令和5年度】 脳・心臓疾患の労災認定事案における拘束時間、勤務間インターバルの分析
研究要旨
この研究から分かったこと
労働者の健康確保のためには、長時間労働の是正は当然のことであるが、同時に、休息時間の確保にも留意して、働き方を見直す必要がある。
目的
脳・心臓疾患の労災認定事案における過重負荷に関し、時間外労働の長さだけでなく、休息時間の確保に関わる、拘束時間や勤務間インターバルの状況を分析することで、労働者の健康悪化をもたらした労働環境を考察することを目的とする。
方法
平成22 年度~令和2 年度における脳・心臓疾患の労災認定事案のうち、「長期間の過重業務」が過重負荷として認定された事案を扱う。具体的には、「調査復命書」に付属する「労働時間集計表」の記録を、過労死等データベースの属性情報と接続したものをデータとして使用し、労働時間集計表データに欠損がない2,266 事案を分析対象とした。
結果
1 勤務あたり平均の拘束時間は、16 時間以上の事案が8.2%を占める。「漁業」、「運輸業、郵便業」等の業種や、「農林漁業従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「保安職業従事者」等の職種で1 勤務あたりの拘束時間が長い。1 か月あたりの拘束時間は、平均313.93 時間であり、320 時間以上の事案が32.9%を占める。「農林業」、「漁業」、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」等の業種や、「農林漁業従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「保安職業従事者」、「サービス職業従事者」等の職種で、1 か月あたりの拘束時間が長い。これらの業種・職種では、労働時間に対する拘束時間の比率も高い傾向にある。勤務間インターバルは、9 時間未満の日が12.3%あり、9~11 時間未満を合わせると、11 時間未満の日は36.9%である。9時間未満の日が占める割合は、「漁業」、「運輸業、郵便業」等の業種や、「農林漁業従事者」、「輸送・機械運転従事者」等の職種で高い。9~11 時間未満の日を合わせると、11 時間未満の日が占める割合は、上記の業種・職種に加え、「情報通信業」、「学術研究、専門・技術サービス業」、「宿泊業、飲食サービス業」等の業種や、「サービス職業従事者」等の職種でも高い。
考察
本研究で対象とした事案は、長時間労働以外にも、拘束時間の長い勤務、勤務間インターバルの短い勤務が一定程度あることに特徴がある。こうした働き方は、労働者の休息時間を制約し、健康に悪影響を及ぼすものである。また、拘束時間、勤務間インターバルの状況には、業種・職種による差があり、特定の業種・職種で課題が大きい。
キーワード
脳・心臓疾患の労災認定事案、拘束時間、勤務間インターバル
執筆者
髙見 具広