【令和5年度】 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)コホート研究

  • 令和5年度
  • 高橋 正也
  • コホート研究
  • 長時間労働
  • ストレス

研究要旨

この研究から分かったこと

仕事要求度はその後の健康状態にも強く影響する可能性がある。

目的

コホート研究の進捗の現況と、これまでに収集したデータから仕事のストレスと健康状態との関連を示すことを目的とする。 

方法

研究の現況については2018 年からの参加者数の動向もあわせて示す。仕事のストレスと健康状態との関連については仕事要求度等の仕事要因ストレスによって1 年後の健康診断で有所見(異常値)を示す項目を抽出した。

結果

2023 年度は計106,954 人が研究協力に同意し、参加率は約45%となった。2020~2021 年度の継続参加者のうち15,406 人のデータを粗分析した結果から「心理的な仕事の負担の量」のストレス得点の高さは血圧、体格など7項目の検査値異常に関連していた。同様に「心理的な仕事負担の質」は血圧、肝機能、体格など9 項目、「身体的負担感」は血圧、血糖など5 項目に関連していた。「仕事のコントロール度」の得点の高さは検査異常値との関連は示されなかった。前年度の検査値異常の有無を解析モデルで調整した結果では「心理的な仕事の負担の量」、「心理的な仕事負担の質」、「身体的負担感」の高さは共通して血圧値、空腹時血糖値の異常に関連していた。 

考察

本年度では同意率が4 割を超えており、リクルート対象数の拡大も一因であるが、これまでの協力企業との連携体制の維持による成果であろう。一部のデータを縦断分析した結果から仕事要求度等の仕事要因のストレスは1 年後の健康状態に関連していることが示され、なかでも「心理的な仕事の負担の質」は身体的有所見を示す項目が多かった。要因に共通して収縮期血圧、血糖の異常に影響を残す傾向があった。血圧、血糖は循環器疾患のリスクファクタでもあり、これらの状態の経過を縦断的に分析し仕事による心理的負荷の影響を明らかにすることは過労死等防止の点からも重要である。現在データ収集中であり今後のデータの蓄積によってより明らかになることが期待される。 

キーワード

職域コホート、職業性ストレス、定期健康診断 

執筆者

高橋 正也 

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