【令和6年度】脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案の経年変化解析
研究要旨
この研究から分かったこと
近年の過労死等の業務上事案数の増加にともない属性等には短期的な変化は認められるが、中長期的には顕著な変化は認められなかった。
目的
脳・心臓疾患及び精神障害の過労死等事案について業務上及び業務外の過労死等データベースを構築・解析し、性別、発症時年齢階層、決定時疾患名、業種、健康管理等並びに労働時間以外の業務の過重性(負荷要因、出来事)等の経年変化を検討することを目的とした。
方法
過労死等データベースは、厚生労働省が『過労死等の労災補償状況』で公表しているデータ及び調査復命書等の提供を受け、データ整理(ラベリング等)・項目別入力・検査を経て、平成22~令和4年度の(1)業務上事案データベース(脳・心臓疾患3,294件、精神障害6,438件)、(2)業務外事案データベース(脳・心臓疾患5,268件、精神障害12,512件)を構築し、当該データベースから基本集計を行った。
結果
(1)令和4年度の脳・心臓疾患及び精神障害の業務上事案では、性別比、年齢、死亡・自殺(未遂を含む)、疾患名について前年度と若干の差異があったものの、通年では、脳・心臓疾患は男性が約95%、年齢は40~59歳が多く、死亡は4割弱、脳血管疾患が約6割、業種(大分類)は「運輸業,郵便業」が合計件数、雇用者100万人対換算値とも最も多く、また、精神障害は女性が約36%で、年齢は50歳未満が多く、自殺(未遂を含む)が約16%、気分[感情]障害(F30~F39)が45%弱、業種(大分類)で合計件数が多いのは「製造業」であったが、雇用者100万人対換算値が高いのは「運輸業,郵便業」であった。(2)令和4年度の業務外事案では脳・心臓疾患の性別比、死亡、疾患名について前年度と若干差異があったものの、精神障害では前年度との顕著な差異はなかった。通年では、脳・心臓疾患は男性が約85%、年齢は業務上事案に比べ60歳以上が多く、死亡は約34%、脳血管疾患が約6割、「運輸業,郵便業」が合計件数、雇用者100万人対換算値とも最も多く、また、精神障害は、女性が約44%、業務上事案に比べ29歳以下が少なく、自殺(未遂を含む)が約11%、気分[感情]障害(F30~F39)が約39%、業種(大分類)で合計件数が多いのは「医療,福祉」であるが、雇用者100万人対換算値が高いのは「情報通信業」であった。
考察
令和4年度の業務上事案数は脳・心臓疾患、精神障害とも前年度に比べ増加しており、この部分の属性等に変化があるが、通年では属性等に顕著な違いはなく、これは業務外事案でもほぼ同様であった。よって、過労死等防止対策を展開する上で、継続的なモニタリングとデータベースの構築は今後も必要と考えられる。
キーワード
労災支給事案、労災不支給事案、経年変化
執筆者