【平成29年度】 労働者の体力を簡便に測定するための指標開発
研究要旨
長時間労働等の労働環境が身体に及ぼす影響の程度を明らかにするためには、それら外的要因だけでなく、労働者自身が備え持つ特性(内的要因)を含めて検討する必要がある。本研究では、労働者の特性のうち、外的要因から身を護るために必要な特性として“体力”、特に疾患発症との強い関連が明らかにされている“心肺持久力(cardiorespiratoryfitness:CRF)”に着目する。
平成27~29年度に行った研究は、労働者のCRFを簡便かつ安全に評価するための評価方法の開発を目的とした。検討している新しい評価方法(仮称HRmix)は、①簡易体力測定から得られる情報(運動中と運動後の心拍数)、②運動状況を調査する質問紙から得られる情報(座位時間や生活活動強度)、③ウェアラブル機器から得られる情報(日常の身体活動量や心拍数)を組み合わせた方法である。本稿では、これまでの実験室実験に参加した被験者120人のうち、データ処理を済ませ、解析可能となった80人のデータをまとめた結果を報告する。CRFの妥当基準として測定した最大酸素摂取量(VO2max)とHRmixの値を比較した解析では、HRmixがCRF測定法として一定の水準にあることが示された一方で、いくつかの課題(ウェアラブルデータの取得方法や解析方法に改善の余地があること、対象者を増やし男女別に検討する必要があることなど)も明らかとなった。次の段階は、得られた課題の解決に向けた実験を進めつつ、HRmixの値と疾患関連データとの関連性を検討する疫学研究である。