【令和3年度】 疫学調査効率化を目的とした疲労Checker のウェブアプリ化

  • 令和3年度
  • 西村 悠貴
  • 現場介入研究
  • 疲労
  • ストレス
  • ツール

研究要旨

この研究から分かったこと

疫学的な調査研究で参加者が保有しているスマートフォンを使えるように、オンライン実験に対応したウェブアプリを開発した。従来の質問紙や実験用デバイスを郵送する方法と比較して大幅に参加者の数を増やすことができ、フルデジタル化によってデータ解析までの日数も大幅に短縮することができた。

目的

これまでの疫学調査では質問紙や実験用デバイスを参加者に郵送し、実験終了後に返送してもらうことで調査を行っていた。一方、返却忘れやデバイスの故障、保有する機材数や予算による制約、紙データのデジタルデータ化が必要といった課題が存在していた。そこで、疫学的調査で多用される質問票に加え客観的な行動指標(心理課題)の計測が可能な新たなアプリ(以下、新アプリという。)を開発して研究参加者のスマートフォンからの研究参加を可能にし、上記のような課題を改善することを目的とした。

方法

すでに開発されているAndroid のネイティブアプリ版「疲労Checker」(以下、旧アプリという。)の課題を洗い出し改善策を抽出することで、新アプリの要件を定義した。新アプリはGoogle 社のクラウド基盤上に構築し、ウェブブラウザを使ってアクセスするウェブアプリとした。クラウドへの通信は全て暗号化することで、セキュリティにも配慮した。

結果

旧アプリ版の骨子は保ちつつ、ウェブブラウザで動作する新しいアプリを開発できた。また、より多角的に調査が行えるように、旧アプリにも搭載されていたPVT(Psychomotor Vigilance Task)課題に加え、ワーキングメモリーや実行機能に関わる心理課題が実施できるようにした。心理課題は先行研究での採用例も多いjsPsych というJavaScript ライブラリを使って実装することで、得られるデータの信頼性を担保した。ウェブアプリ化によって、研究活動における時間的・金銭的ボトルネックとなっていた郵送やデータ化作業を完全になくすことができた。

考察

今回の開発により、旧アプリの課題に対処しつつより効率的に研究が行えるようになった。すでに実際の研究でも利用実績があり、幅広い利用が予定されている。引き続き、研究者・研究参加者の双方が使いやすいアプリにすべく、ウェアラブルデバイスとの連携なども視野にいれて改良を進める。また、なるべく早い段階での新アプリの外部公開(外部研究者への利用許諾)も計画している。

キーワード

疲労Checker、オンライン実験、ウェブアプリ

執筆者

西村悠貴

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