【令和4年度】 地場トラックドライバーの職場における血圧上昇要因の検討
研究要旨
この研究から分かったこと
夜勤への従事は脳・心臓疾患のリスクになり得ることが確認され、日々の勤務において拘束時間が長くなること、勤務間インターバルや睡眠時間が短くなることで血圧値が上昇した。毎日の健康管理では、個人が意識的に睡眠時間を確保するだけでなく、会社による夜勤スケジュール調整が重要であることが窺えた。
目的
地場トラックドライバーを対象とした観察調査の結果より、脳・心臓疾患発症のリスクである高血圧及び動脈硬化に関連する要因を明らかにすることを目的とした。
方法
7 事業場の60 人の地場トラックドライバー(平均値±標準偏差、51.0±10.5 歳、男性57人、女性3 人)が調査に参加した。調査はトラックドライバー1 人につき休日を含む連続30 日間の測定を行った。調査参加者は、勤務日において出勤時と退勤時の2 回の点呼時に血圧(SBP:Systolic Blood Pressure、DBP:Diastolic Blood Pressure)及び血管指標(血管の硬さを表すAPI:Arterial Pressure volume Index、AVI:Arterial Velocity pulse Index)の測定を行った。調査期間中は自宅における全ての主睡眠に対して睡眠測定を行った。マルチレベル分析を用いて、①勤務中の血圧値及び血管指標の変化と、②変化に関連する労働・睡眠条件の検討を行った。
結果
①では、SBP は出発時で高く、DBP は既往歴の有る群で有意に高かった。API は出発時で有意に高かった。②では個人内でSBP とDBP は前日が休日の場合にそれぞれ4.10mmHg、1.97mmHg 有意に高く、DBP は夜勤で1.41mmHg 有意に高い関連が示された。労働時間のうち、SBP は勤務間インターバルが1 時間短縮すると0.07mmHg、DBP は拘束時間が1 時間長くなると0.12mmHg、出発時刻が1 時間遅くなると0.60mmHg 上昇する関連が示された。睡眠時間のうち、DBP は総就床時間が1 時間短くなると0.50mmHg、就床時刻が1 時間遅くなると0.10mmHg 上昇する関連が示された。血管指標では、AVI は個人間で、労働時間のうち拘束時間が1 時間短いと1.27、出発時刻が1 時間遅いと1.98 高い関連が示された。睡眠時間のうち起床時刻が1 時間早いと2.18 高い関連が示された。
考察
勤務中の血圧及び血管指標は既往歴の有無にかかわらず、休日後の出発時に高くなっており、勤務開始時の健康管理の重要性が示唆された。また血圧値の抑制には個人毎の夜勤回数や勤務間インターバルの調整による、休息機会の確保が効果的であることが示唆された。血管指標の上昇には、長期的な夜勤への従事が関連することが示唆された。
キーワード
血圧・血管指標、夜勤、総就床時間と取得タイミング
執筆者