【平成30年度】 脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災認定事案の研究

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  • その他
  • 労災事案分析

研究要旨

本研究は、過労死等事案発生の要因とその背景の解明を目指し、過労死等の予防施策に寄与しようとするものである。過労死等防止調査研究センターが保有する脳心・精神の業務上認定事案及びそれら個別事案の情報を用いて試行的に分析を行った。具体的には、上記業務上認定事案について、性別、業種別、職種別、発症時年代別、発症前6か月の時間外労働時間数別により、全体の傾向把握を行った。その上で、発症時年代、業種、職種を考慮しつつ、特に発症前6か月間の時間外労働時間数が当該期間にわたって比較的多い事例であること、また、当該事案から被災労働者が職場において置かれている職務上の立場、あるいは仕事の状況が比較的明確な事例を選択して個別事案の分析を行い、労災事故が発生した要因を試行的に検討した。

定量的検討からは、発症時年代別、業種別、職種別で特に検討すべきカテゴリが示された。今後の調査研究においては、それらカテゴリについて傾注してより子細に調査分析すべきことが示唆される。また、今回の調査結果からは、政策・施策を検討するに際し、発症時年代別、業種別、職種別の傾向に留意することが効果的な対策につながりうると考えられる。定性的検討からは、①時間外労働(長時間労働)の削減とともに、不規則な勤務形態の是正を企図した工夫を検討すること、②職場における職位・職責に伴う過重労働を軽減する方策を検討すること、③労働者本人の性格や気質を考慮した日常的な労務管理上の工夫の検討を行うこと、④日々の勤務時間管理の方法について、客観的な記録方法の導入・利用を促進し、また、日々の労働時間や休日労働など事態をよく反映しうる自己申告制の在り方を検討すること、⑤36協定における協定時間と実労働時間との乖離を小さくする方策を検討するとともに、36協定の実効性を高める工夫を検討することが示唆されよう。

執筆者

池添 弘邦

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