研究報告書

【令和4年度】 勤務時間外の仕事の連絡と在宅勤務頻度がIT 労働者の心身に及ぼす影響-9 日間の観察調査研究-

【令和4年度】 勤務時間外の仕事の連絡と在宅勤務頻度がIT 労働者の心身に及ぼす影響-9 日間の観察調査研究-
目次

研究要旨

この研究から分かったこと

勤務時間外における仕事の連絡の悪影響は在宅や出社という勤務のあり方により異なった。とりわけ、出社勤務で勤務時間外の仕事の連絡が長いと、就床前の覚醒度が高く、疲労感や抑うつ感も強かった。

目的

勤務時間外の仕事の連絡と出社・在宅勤務という勤務のあり方が労働者の心身に及ぼす影響を、9 日間の観察調査研究により検討することを目的とした。

方法

本研究の調査は、2021 年10 月~12 月に実施した。スクリーニング調査を事前に実施し、一定の基準(業種が情報通信業等)を満たした100 名が本調査に参加した。本調査において、参加者は、就床前と起床後の主観調査(疲労、抑うつ感、眠気等)、活動量計による客観的睡眠測定(睡眠変数を算出)を毎日実施し、特定日の就床前に反応時間検査を実施した。その後、事後調査として、基本属性等への回答を求めた。最終的に、98 名(平均45.3 歳、標準偏差9.3、男性80 名、女性18 名)分のデータを得た。分析として、勤務時間外の仕事の連絡時間(分)と勤務(出社、在宅勤務)及びそれらの交互作用を検討するため、勤務日の主観指標、睡眠変数、反応時間検査を従属変数とした(一般化)線形混合モデルを実施した。

結果

在宅勤務の方が勤務時間外の連絡があった割合が有意に高く、1回あたりの連絡時間も有意に長かった。主観的指標の疲労感、抑うつ感、反応時間検査の見逃しに有意な交互作用が見られ、いずれも出社勤務で勤務時間外の仕事の連絡が長いほど、疲労感や抑うつ感が悪化し、見逃しが少なくなっていた。

考察

勤務時間外の仕事の連絡は、在宅勤務の方が出社勤務と比べて多く、1 回の時間も長かった。一方で、出社勤務で連絡時間が長いほど、就床前の疲労感や抑うつ感が悪化し、反応時間検査の見逃しは少なくなった(覚醒度が高くなった)。就床前に覚醒度が高いと睡眠の質や疲労回復に悪影響が生じる可能性もあり、勤務時間外の仕事の連絡を規制する「つながらない権利」の柔軟な実施でこれらを予防していく必要があるだろう。

キーワード

つながらない権利、在宅勤務、出社勤務

執筆者

池田大樹

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