【令和6年度】脳・心臓疾患の労災認定事案における連続勤務、深夜勤務、不規則勤務の分析
研究要旨
この研究から分かったこと
労働者の健康確保のためには、長時間労働の是正とともに、連続勤務や深夜勤務・不規則勤務の削減等、働き方を見直す必要がある。
目的
脳・心臓疾患の労災認定事案における過重負荷に関し、休息時間の確保に関わる、連続勤務、深夜勤務、不規則な勤務・交替制勤務といった勤務状況を分析することで、時間外労働の長さにとどまらず、労働者の健康悪化をもたらした勤務状況について多角的に考察する。
方法
平成22年度~令和4年度における脳・心臓疾患の労災認定事案のうち、「長期間の過重業務」が過重負荷として認定された事案を扱う。具体的には、「調査復命書」に付属する「労働時間集計表」の記録を、過労死等データベースの属性情報と接続したものをデータとして使用し、労働時間集計表データに欠損がない2,848事案を分析対象とした。
結果
事案における1か月あたりの勤務日数の中央値は24.50日であり、1か月あたりの勤務日数が26日超の事案が19.9%を占める。中央値で見ると、「農林業」、「漁業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「複合サービス事業」等の業種や、「農林漁業従事者」、「建設・採掘従事者」、「サービス職業従事者」等の職種において勤務日数が多い傾向にあり、休日を特に取得しにくい業種・職種と言える。また、評価期間内で14日以上の連続勤務がある事案が26.4%を占める。就業時間帯に関して、中央値で見ると、「漁業」、「運輸業,郵便業」等の業種や、「保安職業従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「農林漁業従事者」等の職種において深夜勤務の頻度が高い。さらには、中央値で見ると、「漁業」、「運輸業,郵便業」、「金融業,保険業」、「医療,福祉」等の業種や、「保安職業従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「農林漁業従事者」等の職種では、始業時刻の標準偏差が大きく、始業時刻が一定でない不規則勤務・交替制勤務の状況が多く観察される。
考察
本研究で対象とした事案の大半は長時間労働の状況にあるが、加えて、連続勤務、頻繁な深夜勤務、不規則勤務・交替制勤務のケースが一定程度ある。こうした働き方は、休息時間の著しい制約や、生体リズムとの不整合等により、健康に悪影響を及ぼす。また、勤務の状況には、業種や職種による差があり、特定の業種や職種で課題が大きいことが示された。
キーワード
連続勤務、深夜勤務、不規則勤務・交替制勤務
執筆者
髙見 具広