【令和6年度】指輪型生体デバイスを用いたトラック事業者への睡眠介入調査
研究要旨
この研究から分かったこと
指輪型生体デバイスとスマートフォンアプリを用いた毎日の睡眠の「見える化」による介入は、個々の睡眠時間の延長や睡眠時刻の固定には寄与しなかった。睡眠時間の延長には、出勤時刻を遅くすることが有効であり、その結果として血圧を低下させるかもしれない。不規則勤務者の睡眠改善のためには、勤務スケジュールへの介入が重要であることが示された。
目的
指輪型生体デバイスとスマートフォンアプリを用いた毎日の睡眠の「見える化」と睡眠アドバイスによる介入が、不規則勤務者の睡眠の取り方と健康・安全に及ぼす影響を検証することを目的とした。
方法
貨物自動車運送業の地場トラックドライバー、内勤者、倉庫作業者の40人が本調査に参加した。2か月間の介入条件と2か月間の統制条件での調査をクロスオーバーデザインで行った。介入条件では参加者が2か月間の指輪型生体デバイス装着とスマートフォンアプリで毎日の睡眠状況の確認を行った。その他の測定項目は、調査期間を通して、機器を用いての睡眠、血圧、反応時間検査測定、唾液採取、WEBアンケート、勤務データであった。
結果
睡眠の「見える化」及び睡眠アドバイスによる、参加者の睡眠への意識や行動の変化は3割程度であり、介入条件で睡眠時間は延びなかった。睡眠時間の延長は、早い就床時刻と遅い出勤時刻と関連しており、睡眠時間が長い月ほど血圧値が低下する関連が示された。
考察
睡眠時間を延長する要因が、勤務拘束時間や勤務間インターバルではなく、就床時刻や出勤時刻であったことから、不規則勤務者の睡眠時間は、勤務を行う時刻の影響を強く受けることがうかがえた。また、参加者の平均睡眠時間にかかわらず、睡眠時間が長い月ほど血圧値が低下する関連が示されたことから、睡眠記録による継続的な「見える化」と、出勤時刻に注目した勤務改善をあわせて行う必要性がうかがえた。
キーワード
睡眠介入、指輪型生体デバイス、トラックドライバー
執筆者