【令和3年度】 深夜勤後の勤務間インターバルの確保による3 交替勤務スケジュールへの介入調査

  • 令和3年度
  • 久保 智英
  • 重点業種
  • 現場介入研究
  • 長時間労働
  • 夜間勤務・夜勤
  • 不規則勤務
  • 勤務間インターバル
  • 疲労
  • ストレス
  • 睡眠

研究要旨

この研究から分かったこと

「深夜勤-深夜勤-準夜勤-準夜勤」の交替勤務シフトから、深夜勤後に休日を挿入して勤務間インターバルを確保する「深夜勤-深夜勤-休日-準夜勤-準夜勤」の介入シフトで2 か月間、働いた結果、残業時間の増加等の変化もなく、疲労や睡眠、ストレス等の心理・行動指標で改善効果が観察された。

目的

調査実施前に看護師への職場の疲労カウセリングを行った結果、「深夜勤-深夜勤-準夜勤-準夜勤」のシフトの組み合わせで働く際の疲労度が高いことが示唆された。そこで、生体負担が特に大きいと思われた2 連続深夜勤後に1 日の休日を配置して勤務間インターバルの確保をした介入シフト「深夜勤-深夜勤-休日-準夜勤-準夜勤」で働いた場合の疲労や睡眠、ストレス等を非無作為化クロスオーバー比較試験で検討することが本研究の目的である。

方法

同じ病棟で勤務する30 名の看護師が調査に参加した(平均年齢±SD;28.2±5.9 歳)。調査期間は2020 年10 月~2021 年2 月で10 月はベースラインとした。参加者は2 群に分類され、A 群は11~12 月、B 群は1~2 月の2 か月間をそれぞれ介入条件として、それ以外の2か月間は統制条件とするクロスオーバーデザインで実施した。病院の勤怠データ、疲労度測定アプリ、疲労やストレスに関する心理指標、反応時間検査、マット型睡眠計、毛髪と唾液によるストレスの生化学的指標を用いて介入効果を検証した。主なデータはベースラインからの差分値を用いたマルチレベル分析(条件×時期)により解析を行った。

結果

従来シフトに比べて介入シフトで深夜勤から準夜勤までの勤務間インターバルは増加した(従来;平均29 時間、介入;平均53 時間)。その間の睡眠時間や回数も増えていたが、両条件で労働時間(残業含む)等に違いはなかった。疲弊度は統制条件に比べて介入条件において有意に低下しており、介入後2 か月目にその差は顕著であった。他の心理指標においても同様の傾向が見られた。しかし、ストレスの生化学的指標では両条件に有意差は検出されなかった。

考察

疲弊、ストレス、眠気、睡眠等の心理・行動指標で介入の効果が認められた。一方、生理指標には明確な差が観察されなかった。その理由は4 か月の介入期間中に測定回数が10月、12 月、2 月の3 時点であったことや、生理指標に効果が観察されるには2 か月の介入期間では短かった可能性等が考えられた。しかし、残業を含む労働時間を変えずに休日の配置を変えただけで、様々な指標に介入効果が観察されたことは特筆すべきことである。本調査による「深夜勤-深夜勤-休日-準夜勤-準夜勤」の介入シフトは他の病院でも水平展開でき得る良好事例として、交替勤務看護師の疲労管理を考える上でも重要な知見として考察される。

キーワード

交替勤務、勤務間インターバル、クイック・リターン

執筆者

久保智英

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