【令和4年度】 脳・心臓疾患の労災認定事案における就業スケジュールの分析
研究要旨
この研究から分かったこと
長時間労働を是正すべきであるのはもちろんであるが、同時に、労働者の健康確保のためには、労働時間の「長さ」だけでなく、適正な就業スケジュールも重要である。
目的
脳・心臓疾患の労災認定事案において、就業時間帯や勤務間インターバルなどの就業スケジュールを分析することで、労働者の健康悪化をもたらす業務負荷について、労働時間の長さ以外の側面に焦点をあてて考察することを目的とする。
方法
脳・心臓疾患の労災認定事案のうち「長期間の過重業務」が過重負荷として認定された事案を検討対象とする。分析では、「調査復命書」に付属する「労働時間集計表」の記録を、過労死等データベースの属性情報と接続したものをデータとして使用する。本年度は、上記の労災認定事案のうち、労働時間集計表において扱う変数に欠損がない事案(1,692 事案)をサンプルとし、就業時間帯、勤務間インターバルといった就業スケジュールを分析した。
結果
始業・終業時刻で表される就業時間帯は、業種による差が大きい。勤務日のうち深夜勤務のある日が占める割合は、「宿泊業,飲食サービス業」、「農林漁業」、「情報通信業」、「運輸業,郵便業」で大きい。勤務間インターバルの状況も、業種による差が見られ、「農林漁業」、「運輸業,郵便業」、「金融・保険・不動産業」、「学術研究,専門・技術サービス業」、「情報通信業」などにおいて、勤務間インターバルが短いケースが相対的に多い。
考察
本研究で対象とした労災認定事案は、長時間労働の事案であるが、労働時間の長さ以外にも、就業スケジュール面の特徴があり、深夜勤務が多い事案や、勤務間インターバルが短い事案が一定数存在していた。就業スケジュールについては、業種による差異も少なからずあり、特定の業種で課題が大きいことも示された。
キーワード
長時間労働、就業スケジュール、労働時間集計表
執筆者
髙見具広