わが国のホワイトカラー男性労働者における長時間労働と睡眠問題の関連

わが国のホワイトカラー男性労働者における長時間労働と睡眠問題の関連
目次

出典論文

Nakashima et al. Association between long working hours and sleep problems in white-collar workers. J Sleep Res. 2011 Mar; 20 (1): 110-6. PMID: 20561174

著者の所属機関

金沢医科大学等

内容

ホワイトカラー男性常勤労働者1,510名(18-59歳)を対象に、長時間労働と睡眠問題の関連を検討した。睡眠問題をピッツバーグ睡眠質問票(PSQI、※1)で得点化した。月当たりの平均残業時間を過去6か月のタイムカードの記録から算出し、5群に分けた(26時間未満、26-40時間、40-50時間、50-63時間、63時間以上)。月平均残業時間が長くなるにつれて、睡眠時間は短く、睡眠効率は低く、日中機能不全は多くなった。睡眠障害の疑われる(PSQI得点-5.5点)労働者の割合は、月残業26時間未満の群と比較して26-40時間群で1.22倍(95%信頼区間:0.86-1.75)、40-50時間群で1.27倍(0.89-1.82)、50-63時間群で1.67倍(1.17-2.38)、63時間以上群で1.87倍(1.30-2.68)多かった。以上より、長時間労働は複数の睡眠問題と関連し、特に月残業時間が50時間以上になると関連は明確になることが明らかになった。

※1:PSQIは国内外問わず睡眠障害のスクリーニングのために臨床場面や研究で多く使用されている。PSQI日本語版は、18の質問項目からなり、7つの構成要素がある(睡眠の質、睡眠潜時、睡眠時間、睡眠効率、睡眠妨害、眠剤の使用、日中の機能不全)。そのため、総合的に睡眠問題を判定できる。PSQIの総合得点は0-21点の範囲で、睡眠障害のカットオフ値は5.5点となっている。

解説

本研究以前も、残業が睡眠の量・質に悪影響を及ぼすという報告はあったが、それらは残業時間が主観的に評価されたものであり、また、PSQIのように総合的に睡眠問題を扱う指標は用いられていなかった。本研究は、これらの問題を解消し、残業時間が種々の睡眠問題に関連することを改めて明らかにした。特に短時間睡眠は心筋梗塞等と関連することが報告されており、注意が必要である。

池田 大樹(いけだ ひろき)
記事を書いた人

池田 大樹(いけだ ひろき)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の主任研究員で、現場介入チームと心血管系チームに所属。専門分野は睡眠学。質問紙による横断・縦断調査、睡眠計や疲労アプリを用いた観察調査、実験室実験などにより、過労死及びその防止に関する研究を、睡眠をメインとして実施している。