休暇中より睡眠の質が悪い教師とそうでない教師の社会的職業特性の比較

休暇中より睡眠の質が悪い教師とそうでない教師の社会的職業特性の比較
目次

出典論文

Teacher's sleep quality: linked to social job characteristics? Industrial Health. 2018, 56, 53-61. PMID: 28804097

著者の所属機関

ベルン大学(スイス)等

内容

仕事量は多いものの、教師という職業は社会的にもやりがいのある職業である。本研究では、スイスの教師を対象とし、「睡眠の質の悪化」(“休暇中よりも質の悪い睡眠”と定義)と、「時間に関連した職業ストレッサー」、「仕事に関する資源」、および「社会的職業特性」との関連について検討した。
調査対象は、スイスの教師48名(男性28名、女性20名)であり、休暇(1-5週間)の1週間前(time1)と休暇の1週間後(time2)の計2回、調査への回答を求めた。休暇1週間前(time1)には、デモグラフィック変数と、過去1か月の仕事に関連した内容(「時間のコントロール」、「上司からのサポート」、「仕事での成功」、「仕事での失敗」、「感情的不協和」、「社会的排斥」等)、過去1週間の睡眠の質を尋ね、休暇1週間後(time2)には、休暇中の睡眠の質について尋ねた。
結果から、平均値でみると、睡眠の質は休暇中の方が高かった。また、睡眠の質が悪化していた教師(18名)は、そうでない教師(30名)よりも、「仕事での失敗」、「社会的排斥」、「感情的不協和」が高かった(Ps < .05)。「時間に関連した職業ストレッサー」、「時間のコントロール」、「上司からのサポート」については、差は見られなかった。

解説

学校の教職員は、「過労死等防止のための対策に関する大綱」で過労死等の多発が指摘されている5つの業種・職種の中に含まれており、業務が多忙で精神的負担も大きい職業の1つである。本研究では、休暇前・休暇中の睡眠の質と社会的職業特性に着目し、睡眠の質が悪い教師は、「仕事の失敗」の経験が多いなどの特徴があることを明らかにしている。調査対象者や調査項目の点で問題点はあるものの、今後職業別の予防対策を検討していく上で、参考になる知見であると考えられる。