韓国における建設労働者の精神的健康状態の分析

韓国における建設労働者の精神的健康状態の分析
目次

出典論文

YLim S et al. Analyzing psychological conditions of field-workers in the construction industry. Int J Occup Environ Health. 2017 Oct;23(4):261-281. PMID: 29989485

著者の所属機関

ソウル大学建設環境工学科等

内容

本研究では、韓国の建設労働者の精神的健康を横断調査によって検討したものである。道路、トンネル、橋梁、地下鉄、アパートの建設労働者430名を対象に、ストレス、気質、抑うつや不安、飲酒習慣を質問紙にて調査を実施した。その結果、建設労働者は高いストレスに悩まされており、約4割が抑うつや不安を抱えていただけでなく、約6割がアルコール摂取問題を有していた。また、労働条件によって精神的健康が異なり、総合建設業者は下請け業者よりも、経験が浅いアシスタントは現場監督者や熟練職人よりもストレスや不安が高かった。これらの背景として、総合建設業者は元請負者として発注者と下請け業者とを仲介する役割が、アシスタントは仕事に対する裁量権がなく単純な日常業務の繰り返しが起因していると考えられる。また、日雇いの建設労働者はストレスがより高く、不安定な雇用状態による影響も見受けられる。建設業では、過酷な労働状況、仕事の大規模性や多層構造、天候等による日々変化する作業内容からストレスが生じやすい可能性がある。自己チェックツール等を使用してストレス原因の軽減や減少とアルコール摂取問題に対する心理的介入によって建設労働者の精神的健康を促進し、それがさらに労働生産性と現場の安全性の向上に繋がると考えられる。

解説

本研究では、韓国の建設労働者の精神的健康状態を明らかにし、労働条件によって精神的健康状態の相違があることを明らかにしている。わが国において建設業は、精神障害による労災認定事案は多いことが分かっており、2018年の「過労死等防止のための対策に関する大綱」で過労死等の多発が指摘されている業種・職種の1つとして新たに加えられたものの、その詳細は十分に解明されていない。今後、建設業の予防対策を検討していく上で労働条件の相違にも注目して検討する必要があるだろう。