精神障害の労災認定要件を満たす業務負荷は性別・業種で大きく異なる
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この研究から分かった事
・精神障害(自殺を含む)の労災認定事案において、認定要件を満たす業務負荷の分布は性別・業種で大きく異なる。
・男性事案では、情報通信業や宿泊・飲食業などを中心に「長時間労働関連の出来事」による労災認定が多く、この傾向は自殺事案に限定すると一層顕著である。
・一方、女性事案では「長時間労働関連の出来事」による労災認定は相対的に少なく、「事故・災害関連の出来事」「対人関係関連の出来事」による認定が多い傾向が見受けられる。
目的
精神障害(自殺を含む)で労災認定された全事案について、性別、業種及び労災認定要件を満たす業務負荷別の実態を把握する。
方法
2010年1月~2015年3月の精神障害の労災認定事案のうち、2011年改正の基準で認定された1,362件について、性別、業種及び業務負荷別の分析を行った。
結果
男性事案の55.7%は「長時間労働関連の出来事」に該当し、この傾向は自殺事案でより顕著であった。「長時間労働関連の出来事」とともに、「事故・災害関連の出来事」「対人関係関連の出来事」などへの該当状況も性別及び業種により大きく異なっていた。
考察
労災認定要件を満たす業務負荷は性別・業種で大きく異なることから、業務に起因する精神障害・自殺の予防においては、業種の特性や長時間労働以外の要因も考慮した対策が必要であることが示唆された。
キーワード
精神障害、自殺、労災認定、業種、長時間労働
出典
Yamauchi T, Sasaki T, Yoshikawa T, Matsumoto S, Takahashi M, Suka M, Yanagisawa H. Differences in work-related adverse events by sex and industry in cases involving compensation for mental disorders and suicide in Japan from 2010 to 2014. Journal of Occupational and Environmental Medicine. 2018;60:e178-82.
https://doi.org/10.1097/JOM.0000000000001283