長時間労働が24時間自由行動下血圧に及ぼす影響

長時間労働が24時間自由行動下血圧に及ぼす影響
目次

出典論文

Hayashi T et al. Effect of overtime work on 24-hour ambulatory blood pressure. J Occup Environ Med. 1996 Oct;38(10):1007-11. PubMed PMID: 8899576. DOI: 10.1097/00043764-199610000-00010

著者の所属機関

日立健康管理センター等

内容

過労死等の主要なリスク要因として長時間労働があげられる。本研究では、長時間労働が心血管系に及ぼす影響を調べるため、47名のホワイトカラーの男性労働者の中で、正常血圧(収縮期血圧<140mmHg、かつ拡張期血圧<85mmHg)を示す21名と,軽度(Ⅰ度、Ⅱ度)高血圧(140mmHg ≤ 収縮期血圧<160mmHg、または90mmHg ≤ 拡張期血圧<105mmHg)を示す26名を対象にして、24時間自由行動下血圧測定を行った。さらに、これらの参加者を、月の時間外労働の長さによって、長時間労働のグループ(60時間以上の者)と、そうではない対照グループ(30時間以下の者)に分類した。最終的に、本研究では、1)正常血圧の長時間労働者10名(平均年齢42歳)、2) 軽度高血圧の長時間労働者15名(平均年齢47歳)、3)正常血圧の対照者11名(平均年齢39歳)、4) 軽度高血圧の対照者11名(平均年齢46歳)の4つのグループを設定し、血圧と心拍数の数値を比較した。その結果、正常血圧者において、長時間労働者の収縮期血圧と拡張期血圧は、対照者に比べて、統計的に高い値が示された。また、軽度高血圧者において、長時間労働者の拡張期血圧と心拍数は、対照者に比べて統計的に高かった。さらに、労働時間が不規則であった正常血圧者も調査した結果、繁忙期(月の時間外労働96時間程度)の血圧と心拍数は、繁忙期ではない時期(月の時間外労働43時間程度)と比べて、統計的に高いことが分かった。これらの結果は、長時間労働が正常血圧者と軽度高血圧者の心血管系負担を増大することを示している。

解説

心血管系の過剰反応が慢性化すると、虚血性心臓病や高血圧症などの心血管系疾病リスク、さらにはこれらの疾患が原因とある死亡リスクの増加が報告されている。本研究の結果も、長時間労働が心血管系の負担を増大することを示していることから、長時間労働は心血管系疾病、さらには過労死等へのリスク増大につながるものと考えられる。