女性の夜勤と乳がん:スウェーデンコホートスタディ

女性の夜勤と乳がん:スウェーデンコホートスタディ
目次

出典論文

Åkerstedt T, et al. Night work and breast cancer in women: a Swedish cohort study. BMJ Open. 2015; 5(4):e008127.

著者の所属機関

カロリンスカ研究所(スウェーデン)

内容

2007年に国際がん研究機関は文献レビューの結果より女性の夜勤・交代勤務者が乳がんになるリスクが高いことを報告した。しかし曝露の長さとの関係ははっきりしておらず、本研究は女性の夜勤に従事した年数と乳がん発症の関係を調べて新たに情報提供することを目的とした。調査対象はスウェーデンの女性13656名(調査開始時に41-60歳であった者)で平均8.7年追跡された。そのうち3404名が夜勤に従事しており、また463名が追跡終了までに乳がんになった。夜勤をしたことのない群に対して、夜勤に21年以上従事した群で、1.68倍乳がんになりやすいことが示された。また60歳まで追跡した群でも、夜勤に21年以上従事した群で1.77倍乳がんになりやすいことが示された。20年以下の夜勤従事では、乳がんとの関係が示されなかった。

解説

これまで行われた研究結果と同じく、長期間の夜勤曝露と女性の乳がんリスクとの関係が示された。夜勤曝露と乳がんの関係を調べた研究では、本研究のような追跡調査はわずかである。また、スウェーデン国民全体について調べており、追跡対象の偏りが少ない研究であった。ただし、著者も指摘するように、どの程度の夜勤曝露量が乳がん発症と関係があるのかは未だ明らかにされておらず、今後の研究が待たれる。

松元 俊(まつもと しゅん)
記事を書いた人

松元 俊(まつもと しゅん)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究員で、現場介入チームと心血管系チームに所属。専門分野は産業保健、人間工学、健康科学。主に過労死多発職種であるトラックドライバーの負担軽減策に関する研究を担当。これまで行ってきた人間工学的な夜勤・交代制勤務スケジュールの改善や睡眠を中心とした労働者の疲労回復策に関する研究の経験を活かして、看護や介護労働等における不規則勤務職場の勤務スケジュールへの介入研究にも参加。オフの時間は深煎りのコーヒーを淹れて読書をしたり、録画したテレビ番組を視聴したりして過ごしている。