従業員の健康に対する組織(職場)レベルの介入がもたらす効果:系統的レビュー

従業員の健康に対する組織(職場)レベルの介入がもたらす効果:系統的レビュー
目次

出典論文

Diego Montano, Hanno Hoven, Johannes Siegrist. Effects of organisational-level interventions at work on employees’ health: a systematic review BMC Public Health 2014, 14:135.

内容

従業員の健康に対する組織(職場)レベルの介入は、従業員個人の行動を対象とした介入よりも、持続可能な効果をもたらすと考えられている。しかし、介入の研究から得られた科学的根拠は、この考えを必ずしも裏付けるものではない。そのため、著者らは、さまざまな労働条件を対象として実施された、健康に関連する介入にまつわる研究結果39件について、その有効性の評価を系統的レビューした。従業員の健康状態を改善することを目的とした組織(職場)レベルの介入研究について、その評価をCochrane Back Review Groupガイドラインに準じて実施した。多種多様な条件の研究を比較しやすくするため、労働条件の改善に向けて採用された主なアプローチごとに、介入活動を分類し、この分類に基づき、ロジスティック回帰モデルを適用することで、有意な介入効果を推定した。その結果、1993-2012年の間に発行された39件の介入研究をレビューの対象とされ、介入研究の過半数は、質が中程度で、高レベルのエビデンスとして認められる研究は4件のみであった。研究の約半数(19件)では、有意な効果が報告された。複数の組織レベルの介入が同時に行われた場合に何らかの改善効果が報告される確率は、(介入ターゲットが1つだけの場合と比べて)有意傾向であった(オッズ比(OR)2.71; 95% CI 0.94-11.12)。本レビューの対象となった組織(職場)レベルの介入39件は、広義の分類カテゴリーを適用することで、その効果を比較できるようになった。物質的条件、組織に関連する条件、および労働時間に関連する条件に同時に対処した包括的な介入の方が、成功率は高かった。今後、組織レベルの介入の成功件数を増やしていくためには、これらの研究で共通して報告されている実施プロセス上の障害を克服する必要がある。

解説

従業員の健康に対する組織(職場)レベルの介入に関しては、そのエビデンスレベルが相違している。また、職域への介入はその統制が困難であるのが通例であり、科学的根拠について、研究の質が高のものが少ないことは驚くに値しない。むしろ半数以上で有意なアウトカム指標が得られており、それらの研究内容を丁寧に吟味し、組織介入における有用な知見を提供している。

本論文が整理した介入労働条件の3つの分類は、職域における過重労働対策、心の健康づくり支援のための有用な視点を提供している。すなわち、(1)物質的な条件(作業環境・人間工学、以下作業環境):業務遂行時に必須なあらゆる物理的物質の影響・化学薬品の使用を含む(例:振動、騒音、化学物質、人間工学など)、(2)労働時間に関連する条件:労働時間数、労働強度すなわち単位時間あたりの作業量(例:作業速度、シフト数、締め切り、作業ペース、休憩回数など)、(3)労働組織における条件:さまざまな心理的・社会的要因(仕事の要求度、仕事のコントロール、努力と報酬、責任など)や、業務の遂行に必要なプロセス・手順(例:作業方法、各タスクの実施順、チーム編成、組織内の階層構造、セキュリティガイドラインに関するトレーニングなど)の介入条件が整理されている。
複数の要因に介入した研究のエビデンスが高かったことも、昨今の包括的な介入が推奨されている状況を反映している。

吉川 徹(よしかわ とおる)
記事を書いた人

吉川 徹(よしかわ とおる)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)のセンター長代理で、専門分野は産業安全保健学、産業医学、国際保健学。事案研究班と対策実装班に所属。産業精神保健分野での職場環境改善とメンタルヘルス一次予防、アクションチェックリストやグループダイナミクスを活用した参加型職場環境改善、職業病・作業関連疾患の労災統計と予防策の研究に取り組んでいる。過労死・過労自殺の労災認定事案に関する調査研究と過労死等防止対策の実装にも関与している。学生時代から感染症対策と国際保健に関心があり、都立病院で多くの患者に接する中で、病気の予防のための労働生活改善に関心が高まったことが研究者となったきっかけである。