職場でのうつ病の発症を防ぐ: 職場における普遍的介入の系統的レビューとメタ分析
出典論文
Leona Tan, Min-Jung Wang, Matthew Modini, Sadhbh Joyce, Arnstein Mykletun, Helen Christensen and Samuel B Harvey. Preventing the development of depression at work: a systematic review and meta-analysis of universal interventions in the workplace. BMC Medicine 2014; 12:74. PMCID: 4014627
著者の所属機関
ニューサウスウェールズ大学ブラックドッグ研究所、オーストラリア
内容
本論文は、職場介入に関する無作為化比較試験(RCT)に注目し、標準化されたメンタルヘルス対策として、うつ病の普遍的予防を目的として行われた介入研究を対象にメタ分析を行った。対象研究はDowns and Blackチェックリスト(報告の質,内的妥当性,検出力の評価のほか,臨床的有意性,研究の限界,著者による結論の妥当性,報告全体にわたる明瞭性,十分に報告されたか等)を使用し、9件が特定された。研究の多くは、知行動療法(CBT)の技術が使われていた。参加型アプローチを用いた職場環境改善の研究も報告されていた。メタ分析の結果、介入群と対照群の間の全体的な標準化平均差(SMD)は0.16(95%信頼区間(CI): 0.07, 0.24, P = 0.0002)で、若干のプラス効果が見られた。CBTベースの介入のみを使用した別の分析では、0.12(95% CI: 0.02, 0.22, P = 0.01)の有意なSMDの変化が確認された。本結果から、職場での普遍的なメンタルヘルス介入によって従業員のうつ症状を緩和できるという質の高いエビデンスが得られた。特に、CBTベースのプログラムの有効性に関しては、他の介入よりも多くのエビデンスが存在する。科学的根拠に基づく職場介入は、成人の間でうつ病発症を防ぐための重要な取り組みの一環として検討するべきである。
解説
本論文は、無作為化比較試験(RCT)に注目し、職域におけるうつ病予防のための質の高い普遍的な介入を提案している。今回の評価ではRCTの介入内容は個人に対する認知行動療法(CBT)が多かったが、職場でのストレスを緩和するためにチームベースの参加型介入(Tsutsumiらによる)による知見も注目されていた。一方、本メタ分析におけるうつ病の定義が研究によって異なることや、ここ最近ではマインドフルネス等の新しい介入手法を用いた研究も数多く報告されていることからCBT以外の有効性について、今後の研究が待たれる。これまで海外においてはうつ病対策としての職域アプローチは必ずしも主流ではなかったが、職場への積極的介入は効果があるものを裏付ける報告である。