交代勤務における短い勤務間隔と健康との関係—文献レビューより

交代勤務における短い勤務間隔と健康との関係—文献レビューより
目次

出典論文

Vedaa Ø, et al. Systematic review of the relationship between quick returns in rotating shift work and health-related outcomes. Ergonomics. 2016; 59(1): 1-14.

著者の所属機関

ベルゲン大学、ノルウェー公衆衛生研究所(ノルウェー)

内容

本研究は、交代勤務におけるクイックリターンズ(quick returns:2つの連続する勤務の間隔が11時間未満のもの)と、その結果もたらされる健康や睡眠、ワークライフバランスへの影響との関係を21本の論文の系統的レビューによって調べた。クイックリターンズのタイプは夕勤-日勤、夜勤-夕勤、日勤-夜勤の3つの勤務の組み合わせに分けられ、勤務間隔の長さだけでなく、それぞれの配置される時刻によっても睡眠の長さや眠気が異なって現れた。例えば、勤務間隔時間が8-10時間の場合において、その配置される時刻が夜間となる夕勤-日勤では睡眠時間が5時間以上とられていたのに対して、反対に昼間となる日勤-夜勤では睡眠時間が2.5時間程度になった。また、眠気のリスクはクイックリターンズにおいて、それ以上長い条件と比して高かった。しかし、クイックリターンズにより、睡眠や眠気、疲労などの急性的な悪影響は示されたが、身体的また精神的健康やワークライフバランスなどのより慢性的な影響については結論が示されなかった。

解説

勤務間に配される休息期間の適切な長さについては、永らく交代勤務研究において議論されてきた。それは、常日勤と異なり交代勤務では長時間労働でなくとも勤務の組み合わせによって非常に短い勤務間隔となる場合があるからである。クイックリターンズは、EU労働時間指令にある24時間につき最低連続11時間の休息期間を求める内容を参照して定義されている。このクイックリターンズは逆循環の8時間3交代制においてみられるが、欧米でもっとも一般的なのは夕勤の後に日勤が配置される組み合わせであり、日本では看護労働において日勤の後に深夜勤務が配置される組み合わせが多く見られる。本研究の結果は、勤務間隔時間の長さとともに配置される時刻の効果を示しており、勤務間インターバル制度を導入する上での重要な視点を与えている。

松元 俊(まつもと しゅん)
記事を書いた人

松元 俊(まつもと しゅん)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究員で、現場介入チームと心血管系チームに所属。専門分野は産業保健、人間工学、健康科学。主に過労死多発職種であるトラックドライバーの負担軽減策に関する研究を担当。これまで行ってきた人間工学的な夜勤・交代制勤務スケジュールの改善や睡眠を中心とした労働者の疲労回復策に関する研究の経験を活かして、看護や介護労働等における不規則勤務職場の勤務スケジュールへの介入研究にも参加。オフの時間は深煎りのコーヒーを淹れて読書をしたり、録画したテレビ番組を視聴したりして過ごしている。