日本における過労死:最近の動向と予防対策促進のための国策の展開

日本における過労死:最近の動向と予防対策促進のための国策の展開
目次

出典論文

Yamauchi et al. Overwork-related disorders in Japan: recent trends and development of a national policy to promote preventive measures. Ind Health. 2017; 55 (3): 293-302. PMID: 28154338

著者の所属機関

労働安全衛生総合研究所、他

内容

脳・心臓疾患や精神障害による過労死等は、世界的に、特に東アジア諸国において産業保健や公衆衛生の主要な問題の一つである。本報告は、日本における過労死等の予防対策に向けた国策の展開とともに、労災認定事案の全体像から過労死等の最近の動向について述べた。近年、精神障害による労災請求と決定の件数が大幅に増加している。それは脳・心臓疾患によるものと比べると、特に男女ともに若年労働者で顕著であった。これらの社会状況を鑑みて、国の主導による過労死等の予防を進めるための過労死等防止対策推進法が2014年6月に成立した。日本における経験を他国でも活かせるように、法的根拠と政府主導のもと、過労死等の動向は注意深く観察されなければならない。

解説

本論文は、過労死等防止対策推進法に記されている、過労死等の防止対策に向けた調査研究の成果として、労災認定事案の解析結果を労働安全衛生総合研究所内に設置された過労死等調査研究センターのメンバーが海外向けに発表したものである。本文でも述べているように、過労死という言葉は1970年代に日本で初めて使われたものであり、国際的にも「Karoshi」と表記される。過労死に関する法律ができたのも日本が初めてである。内容は、脳・心臓疾患や精神障害による労災認定事案(公務員を除く)の特徴を、性別、年齢、業種に注目してまとめた初めての報告であり、これから過労死対策を進めていく上での足掛かりとなる重要なデータを示している。当研究所のHPでも、本論文の内容を含む研究報告書(https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku.html)が公開されているのでそちらもぜひ読まれたい。

松元 俊(まつもと しゅん)
記事を書いた人

松元 俊(まつもと しゅん)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究員で、現場介入調査班と循環器班に所属。専門分野は産業保健、人間工学、健康科学。主に過労死多発職種であるトラックドライバーの負担軽減策に関する研究を担当。これまで行ってきた人間工学的な夜勤・交代制勤務スケジュールの改善や睡眠を中心とした労働者の疲労回復策に関する研究の経験を活かして、看護や介護労働等における不規則勤務職場の勤務スケジュールへの介入研究にも参加。オフの時間は深煎りのコーヒーを淹れて読書をしたり、録画したテレビ番組を視聴したりして過ごしている。