ソーシャルジェットラグは、有害な内分泌、行動、心血管リスク特性と関連するか?

ソーシャルジェットラグは、有害な内分泌、行動、心血管リスク特性と関連するか?
目次

出典論文

Rutters F, et al. Is social jetlag associated with an adverse endocrine, behavioral, and cardiovascular risk profile? J Biol Rhythms. 2014; 29(5): 377-383.

著者の所属機関

アムステルダム自由大学医療センター、疫学と生物統計学部(オランダ)

内容

ソーシャルジェットラグは、就業日と休日の睡眠の中間点での時間の差として測定され、概日時計と社会時計の不一致を表す。これまでの研究では、ソーシャルジェットラグは体格指数(Body Mass Index, BMI)、糖化ヘモグロビンレベル(HbA1c)、心拍数、抑うつ症状、喫煙、精神的苦痛およびアルコール摂取と関連していることが示されている。この研究は、明らかに健康な145人の参加者グループ(大学の学生および職員のうち睡眠障害者や交代勤務者を除いた、男性67人、女性78人、18-55歳、BMI 18-35 kg / m2)において、ソーシャルジェットラグの有病率および有害な内分泌、行動および心血管リスク特性との関連を調べることを目的とした。アンケートで判定された、ソーシャルジェットラグが2時間以上の者は参加者の3分の1にみられた。ソーシャルジェットラグが2時間以上の者は1時間以下の者と比較して、血圧や血糖レベルを上昇させるコルチゾール値が高く、週内の睡眠時間が短く、身体活動が活発でなく、安静時心拍数が増加した。以上の結果から著者らは、ソーシャルジェットラグは、健康な参加者において、内分泌、行動、および心血管の有害なリスク特性と関連していると結論付けた。これらの有害な特性により、健康な参加者は、近い将来、糖尿病やうつ病などの代謝性疾患や精神障害の発症リスクにさらされると述べた。

解説

脳・心臓疾患による過労死において睡眠の量と質の影響が少なからずあることは言われているものの、メカニズムについては明らかでない点が多い。本研究は過労死を直接扱ったものではなく、参加者の就業日と休日の睡眠ともに平均8時間程度と十分に取られていた。また、得られたデータに統計的に有意差があったとは言え、どのくらい「有害」であるのかは明確には決められないという限界もある。そうであっても、睡眠をとるタイミングの持つ意義について検討した点から、示唆に富む知見である。日本の労働者に置き換えて考えると、週末に休日がとれたとしても、平日の睡眠時間が極端に短く休日との睡眠中間点の時間差が2時間以上もあるような生活スタイルは、将来の脳・心臓疾患発症リスクを高めるかもしれない。

松元 俊(まつもと しゅん)
記事を書いた人

松元 俊(まつもと しゅん)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究員で、現場介入調査班と循環器班に所属。専門分野は産業保健、人間工学、健康科学。主に過労死多発職種であるトラックドライバーの負担軽減策に関する研究を担当。これまで行ってきた人間工学的な夜勤・交代制勤務スケジュールの改善や睡眠を中心とした労働者の疲労回復策に関する研究の経験を活かして、看護や介護労働等における不規則勤務職場の勤務スケジュールへの介入研究にも参加。オフの時間は深煎りのコーヒーを淹れて読書をしたり、録画したテレビ番組を視聴したりして過ごしている。