RECORDsの業績

働き方(オフィス・在宅勤務)と勤務時間外の仕事の連絡が労働者の健康に及ぼす影響:9日間の観察調査

働き方(オフィス・在宅勤務)と勤務時間外の仕事の連絡が労働者の健康に及ぼす影響:9日間の観察調査
目次

インフォグラフ

働き方(出社・在宅勤務)と勤務時間外の仕事の連絡が労働者の健康に及ぼす影響:9日間の観察調査勤務時間外の仕事の連絡を最小限にすることが労働者の健康のために望まれる

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この研究から分かった事

・オフィス勤務と比べて、在宅勤務において、勤務時間外の仕事の連絡頻度が高く、1回あたりの時間も長かった。

・オフィス勤務日においてのみ、勤務時間外の仕事の連絡が長いほど、就床前の疲労感や抑うつ感が強く覚醒度が高かった。

・働き方(オフィス・在宅勤務)を統計的に調整し、連絡手段別に勤務時間外の仕事の影響を見たところ、ビデオ連絡時間が長いほど就床前の疲労感が強く、電話連絡が長いほど仕事との心理的距離がとれておらず、メール連絡時間が長いほどPsychomotor vigilance task(PVT)※1の見逃し数が少なくなった(覚醒度が高くなった)。

目的

本研究では、働き方(オフィス・在宅勤務)と勤務時間外の仕事の連絡が労働者の健康に及ぼす影響を検討することを目的とした。

方法

情報通信業の日勤労働者98名が9日間の観察調査に参加した。この期間、参加者は、就床前にその日の働き方(オフィス・在宅勤務)や勤務時間外の仕事の連絡時間(電話、メール、既読通知のある・ないアプリ、ビデオ)、その時の疲労感や抑うつ感、仕事との心理的距離を報告するとともに、睡眠計を装着し睡眠を客観的に測定した。また、特定日にPVT短縮版を実施した。

結果

オフィス勤務日と比べて、在宅勤務日の方が、勤務時間外の仕事の連絡頻度が有意に高く、1回あたりの時間も有意に長かった。一方、オフィス勤務日においてのみ、勤務時間外の仕事の連絡が長いほど就床前の疲労感や抑うつ感が強くPVTの見逃し数が少なかった(覚醒度が高いことを示す)。また、働き方(オフィス・在宅勤務)を統計的に調整し、連絡手段別に勤務時間外における仕事の連絡の影響を見たところ、ビデオ連絡時間が長いほど就床前の疲労感が強く、電話連絡が長いほど仕事との心理的距離がとれておらず、メール連絡時間が長いほど覚醒度が高かった。

考察

勤務時間外の仕事の連絡は、働き方で労働者の健康に及ぼす影響が異なるが、働き方を調整しても疲労感等に悪影響を及ぼした。これらのことから、労働者や雇用者、その他ステークスホルダーは、特に出社勤務日において、勤務時間外の仕事の連絡を最小限にすることが望まれる。

※1:Psychomotor vigilance task(PVT):画面上にデジタルカウンター(ランダムな間隔で表示される)が出現したら、できるだけ早くボタンを押す課題。覚醒度の客観的な指標として多くの研究に用いられている。

キーワード

勤務時間外の仕事の連絡、在宅勤務、オフィス勤務、つながらない権利

出典

Ikeda, H., Kubo, T., Nishimura, Y., Izawa, S. (2023). Effects of work-related electronic communication during non-working hours after work from home and office on fatigue, psychomotor vigilance performance and actigraphic sleep: observational study on information technology workers. Occupational and Environmental Medicine, 80 (11), 627-634.
https://oem.bmj.com/content/80/11/627

池田 大樹(いけだ ひろき)
記事を書いた人

池田 大樹(いけだ ひろき)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の主任研究員で、現場介入調査班と循環器班に所属。専門分野は睡眠科学。質問紙のみによる横断・縦断調査、睡眠計や疲労アプリを用いた観察調査、実験室実験など過労死及びその防止に関する研究を、睡眠をメインとして多角的に実施。