長時間労働と冠動脈性心疾患の起こる10年先の確率
出典論文
Kang MY et al. Long working hours may increase risk of coronary heart disease. Am J Ind Med. 2014 Nov;57(11):1227-34. PMID: 25164196.
著者の所属機関
韓国ソウル大学等
内容
韓国健康栄養調査に参加した8,350名(19歳超、正規雇用で非交代勤務、慢性疾患なし;平均46歳、女性43%)に対して、健康診断や週当たりの賃金の支払われた労働時間を含む各種の問診を行った。年齢、総コレステロール、HDLコレステロール、血圧、糖尿病の有無、喫煙の有無に基づいてフラミングハムリスクスコアを男女別に計算した。このスコアは冠動脈性心疾患の向こう10年間における起こりやすさを表す。冠動脈性心疾患の起こる確率が健康群より10%高まると高リスクとみなされる。所得水準、職種、身体活動、飲酒による影響を統計的に調整して分析すると、週労働時間が31-40時間群に比べて、男性では71?80時間群で1.4倍、81時間以上群で1.5倍ほど高リスクとなりやすかった。女性では、61-70時間群で2.9倍、71-80時間群で2.2倍、81時間以上群で4.7倍ほど高リスクとなりやすかった。
解説
労働時間と冠動脈性心疾患の起こりやすさとの関連をある一時点で調べているため、どちらがどちらの原因かを決められない。とは言え、フラミングハムリスクスコアという従来から認められている指標を韓国人労働者に用いているのは有効である。長労働時間と冠動脈性心疾患との関連が女性でよく認められたのは家事労働の影響が指摘されているが、今後の検証が待たれる。いずれにしても、この研究と同様な結果が我が国の労働者についても得られるかを検証する価値はある。また欧米人と日本人との様々な違いを考慮すると、日本人に即したスコアを用いることも視野に入れてよい。