研究報告書

【平成27年度】総括研究報告書 過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究

目次

研究要旨

わが国における過労死等予防に資するため、過労死等の医学・保健面より、1)過去の過労死等事案の解析、2)疫学研究(職域コホート調査現場介入調査)、3)実験研究(循環器負担のメカニズム解明過労死関連指標と体力との関係の解明)を開始した。初年度となる平成27 年度は次の成果を得た。

1)事案解析:全国の労働局及び労働基準監督署より収集した平成22 年1月~平成27 年3 月の労災認定事案の調査復命書3,564 件(脳・心臓疾患事案1,564 件、精神障害事案2,000 件)の事案について解析を行った。調査復命書上のデータは電子化を行い、データベースを構築した。性別、年齢、支給決定時の疾患名、業種、職種、健康診断の実施状況などを優先的に集計し、脳・心臓疾患事案の全体像を把握した。また、脳・心臓疾患の労災請求・支給の最も多い運輸業・郵便業(うち自動車運転従事者)に着目し、被災例の特徴も整理した。精神障害事案については上記の基本的な変数並びに業務による出来事との関連を検討し、精神障害(自殺を含む)の起った背景を把握した。

2)疫学研究:職域コホート調査の予備的な研究として行うフィージビリティ調査に向けて、調査項目の精選や質問の仕方等を検討し質問票を作成した。職域コホート調査を始動させるために共同研究機関を探索し、勤労者支援プログラム機関等から参加の承諾を得た。現場介入調査に向けて、協力先事業場を探索するとともに、調査計画等を検討した。研究分担者の関わる別な職域コホート調査では残業時間と高血圧との関連を詳細に検討した。

3)実験研究:循環器負担に関する研究では、実験環境の整備及び本実験に向けた予備調査として、数名の参加者を対象に調査項目の精査を行った。労働者の体力指標に関する研究では、次年度からの本実験に向け、関連する先行研究の調査を行うとともに、検査に取り入れる器具の精度や実用性を確認した。

執筆者

高橋 正也

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