事案研究班
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事案研究班について

事案研究班は、過労死等の防止対策に資する情報の提供を目的として、労働基準監督署が作成した調査復命書等を収集し、脳・心臓疾患及び精神障害による労災認定事案等の解析を行っています。特に、各業種に注目し、事例に基づいた防止策を提案する事を目指しています。

毎年、新たに収集したデータを加えてデータベースを更新すると共に、脳・心臓疾患及び精神障害の病態や負荷要因についての分析や、業種別の特徴といったテーマについて、それぞれの研究員が分析を進めています。さらに、法学や社会学の専門家や、医師、社会保険労務士等の幅広いメンバーが参画し、多角的な見方で研究を進めています。

次の図は、業種別の日本の雇用者100万人あたりで、何件の過労死等が発生しているかを分析した結果です。全体としては、100万人あたり脳疾患は3.7件、心臓疾患は2.3件、精神障害は9.3件発生しています。業種別にみると発生率に違いがある事がわかります。また、下の図のように、過労死等の原因となった出来事にも業種ごとに差がある事がわかりました。

解析例:脳・心臓疾患、精神障害の労災認定事案の件数と発生率解析例:脳・心臓疾患、精神障害の労災認定事案の件数と発生率

精神:出来事別・業種別分析からみえる、過労死等防止視点精神:出来事別・業種別分析からみえる、過労死等防止視点

過労死等事案の分析の結果から、過労死の防止には、業種ごと、職場ごとで異なった対策が必要であることが示唆されています。

吉川 徹(よしかわ とおる)
記事を書いた人

吉川 徹(よしかわ とおる)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)のセンター長代理で、専門分野は産業安全保健学、産業医学、国際保健学。事案研究班と対策実装チームに所属。産業精神保健分野での職場環境改善とメンタルヘルス一次予防、アクションチェックリストやグループダイナミクスを活用した参加型職場環境改善、職業病・作業関連疾患の労災統計と予防策の研究に取り組んでいる。過労死・過労自殺の労災認定事案に関する調査研究と過労死等防止対策の実装にも関与している。学生時代から感染症対策と国際保健に関心があり、都立病院で多くの患者に接する中で、病気の予防のための労働生活改善に関心が高まったことが研究者となったきっかけである。