飲食店従業員のメンタルヘルスに影響を与える職場要因:西欧の高所得国におけるシステマティックレビュー

飲食店従業員のメンタルヘルスに影響を与える職場要因:西欧の高所得国におけるシステマティックレビュー
目次

出典論文

Grimmond, T., King, T., LaMontagne, A. D., Oostermeijer, S., Harrap, B., Newberry‐Dupé, J., & Reavley, N. Workplace‐related determinants of mental health in food and bar workers in Western, high‐income countries: A systematic review. American Journal of Industrial Medicine, 2024; 67: 696-711.DOI: 10.1002/ajim.23620

著者の所属機関

University of Melbourne, Australia

論文の内容

*背景*
本レビューでは、西欧の高所得国における飲食店従業員のメンタルヘルスに影響を与える職場要因を検討した研究をまとめました。

*方法*
5つの文献データベースを用いて、2000年1月から2023年8月に出版された査読論文を収集しました。研究デザインは指定せず、「Joanna Briggs Institute tools※」を用いて研究の質を評価しました。

*結果*
オーストラリア(3件)、アイルランド(1件)、ノルウェー(1件)、スペイン(2件)、米国(17件)、英国(2件)の計26の研究(調査協力者数は計15,069名)を対象として、記述的分析を行いました。「感情面での仕事上の要求の高さ」や「仕事におけるコントロールの低さ」といった要因が、バーンアウトの高さや抑うつと関連していました。また、顧客や管理職、同僚との非協力的で対立的な対人関係(例:セクシュアルハラスメント、職場でのいじめ)が、抑うつや不安、バーンアウトなどのようなメンタルヘルスの悪化に寄与していることが明らかとなりました。

*結論*
分析対象とした研究の結果から、管理手法や職場でのソーシャルサポートなどの職場文化(職場風土)が従業員のメンタルヘルスに影響を与えることが頑健に示されました。そのため、飲食店従業員のメンタルヘルスを向上させるには、組織レベルの介入が最も効果的である可能性が高く、特に、健康やウェルビーイングの支援を目的とした広範な組織的取り組みの一環として実施する場合に効果的であると考えられます。また、業界全体の構造的な問題(雇用上・経済上の不安定性、仕事上のストレス、福利厚生へのアクセスなど)に対処するためには、政策上の変更が必要となるかもしれません。

 ※ Joanna Briggs Institute toolsとは、出版された論文の信頼性(trustworthiness)、関連性(relevance)、結果(results)を評価するために開発されたツール群のことです。

RECORDsメンバーによる解説

外食産業は、過労死等が多く発生している職種・業種の一つです。また、厚生労働省が行った調査では、「宿泊業、飲食サービス業」は顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスハラ)に関する過去3年間の相談件数が、他の業種と比較して多い傾向にあったことが報告されています(宿泊業、飲食サービス業:46.4%;全業種:27.9%)。その他にも、離職率の高さや人手不足の問題などもあり、外食産業における職場環境を改善していくことが強く求められています。

本論文が分析対象とした研究は、全て西欧の高所得国で実施されたものですが、仕事上の要求(例:顧客に嫌なことを言われても表情に出さない)が飲食店従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす点などは、日本の現状とも共通している部分があると言えそうです。その一方、飲食店従業員を対象とした介入研究が少なかったことが研究の限界点として挙げられています(分析対象のうち1件のみ)。また、対象となった研究の大半が一時点の横断研究であり、因果関係は明らかとなっておらず、エビデンスとしてのレベルはそこまで高くない点についても留意が必要です。他の業種を対象とした研究では、職場レベルの介入が従業員のメンタルヘルスの向上に効果があることが示されているため、効果的な介入を行うためには、個人・職場(対人関係)・組織・社会構造の各レベルを意識して取り組むことが重要であると考えられます。

参考文献

厚生労働省. 令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書.
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001541317.pdf

高田 琢弘(たかだ たくひろ)
記事を書いた人

高田 琢弘(たかだ たくひろ)

労働安全衛生総合研究所 社会労働衛生研究グループ所属。専門は社会心理学、感情心理学。現在は、職場における労働時間把握方法に関する研究などに従事。主な職歴は、東海学園大学心理学部心理学科 准教授など。