1日当たり3~4時間の残業が心疾患リスクを高める
出典論文
Virtanen M et al. Overtime work and incident coronary heart disease: the Whitehall Ⅱ prospective cohort study. Eur Heart J. 2010 Jul;31(14):1737-44. PMID: 20460389. DOI: 10.1093/eurheartj/ehq124
著者の所属機関
フィンランド労働衛生研究所等
内容
ホワイト・ホールⅡ研究による前向きコホート調査に参加した労働者から、6,014名を対象に過重労働と冠性心疾患の関連について解析した。解析対象は1日当たりの残業時間によって、1) 残業しなかったグループ3,256名(54%)、2) 約1時間残業したグループ1,247名(21%)、3) 約2時間残業したグループ894名(15%)、4) 3~4時間残業したグループ617名(10%)という4つのグループに分類した。解析の結果、1日当たり3~4時間の残業をした労働者は、残業をしなかった労働者よりも冠性心疾患の罹患リスクが1.56倍高いことが示された。この結果は、冠性心疾患の罹患リスク要因と考えられる喫煙やコレステロール値の影響を調整した結果であり、長時間労働が冠性心疾患の罹患リスクを高める要因となることが示唆された。また、職務上の裁量権が少なく長時間労働をしている労働者は、裁量権がある労働者よりも冠性心疾患の罹患リスクが高い可能性が示唆された。
解説
今回の調査研究は大規模な調査対象者に対する前向き調査であり、過重労働がいかに冠性心疾患の罹患リスクを予測できるかを検討した研究としての信頼性の高い研究の1つと言える。今回の解析では、長時間労働が冠性心疾患の罹患リスクを高める要因になりうることが示唆された。ただし、労働時間に関する情報の精査が正確であるか、精神疾患(うつ病や不安障害)の影響が考慮されていないこと、調査の対象者がホワイトカラーに限定され、ブルーカラーが含まれないことも、結果の適用範囲を慎重に考える必要がある。
注:ホワイト・ホールⅡ研究(Whitehall Ⅱ study)は、1985年から英国人公務員を対象に実施されている「ストレスと健康」に関する臨床試験。