【令和3年度】 総括研究報告書 過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究
研究要旨
目的
我が国における過労死等の実態を解明し、過労死等の発生要因の検討とともに、過労死等を防ぐための有効な対策について検討・立案することが本研究の目的である。
方法
本研究は1)全国の過労死等に係る調査復命書を収集し、データベースを構築するとともに、実際の過労死等事案から発生要因と防止対策を検討する「事案研究」、2)職場で生じている過労死等の発生要因についての横断・縦断調査と、有効な疲労対策について介入調査で検討する「疫学研究」、3)職場では実施・測定することが困難な状況を実験室内で模擬して検証することとともに、過労死等を防ぐための指標開発を行う「実験研究」、4)これまで得られた知見をもとに様々な業種の実態に即した有効な防止対策を議論し、実装を目指す「対策実装」の4 つのアプローチ(分野)から過労死等の実態解明と防止対策を総合的に検討する。
結果
事案研究からは主に過労死等の発症に関する労災認定事案の過去10 年間の経年変化、重点業種の解析、過労死等の病態や負荷要因の解析、過労死等の発生に関する社会科学的な検討の結果が得られた。疫学研究では、コホート研究からは月の平均労働時間や残業回数と心理的な訴えの関連性、現場介入調査からは、交替勤務に従事する看護師を対象とした連続深夜勤後の勤務間インターバルの確保による介入効果、トラックドライバーを対象とした働き方と血圧の関連性、勤務時間外の仕事のメールと在宅勤務が疲労に及ぼす影響、スマートフォン版の疲労測定アプリの開発の結果が報告された。実験研究からは、次年度の実験研究にドライバーの実際の働き方を反映させるために、WEB 調査と運送会社の運行日誌の検討から、実際のドライバーの休憩のとり方を明らかにした。また、疾病発症との関連性が強く指摘されている心肺持久力の簡便な測定法の開発を試み、その妥当性の検討を行った。対策実装では、運輸業と建設業を対象に、効果的で実施可能な過労死等の防止対策を議論するためのステークホルダー会議を開催し、働き方改善、重層構造、健康管理の方法に注目して、ツールの開発や対策実装のための具体的方策の検討を行った。
考察
事案研究、疫学研究、実験研究、対策実装研究の4 つのアプローチ(分野)から、我が国における過労死等の実態解明とともに有効な防止対策像について多くの示唆が得られた。
執筆者