長時間労働と身体測定、肺機能、血圧、血液検査のバイオマーカーとの関連
出典論文
Virtanen M. et al., Long working hours, anthropometry, lung function, blood pressure and blood-based biomarkers: cross-sectional findings from the CONSTANCES study. J Epidemiol Community Health. 2019; 73(2):130-135. doi: 10.1136/jech-2018-210943.
著者の所属機関
Stress Research Institute, Stockholm University, Stockholm, Sweden.
内容
長時間労働は心臓疾患の発症と関連していることが示されているが、長時間労働に関連する臨床的リスク因子は依然として不明である。著者らは、フランスの22の健康診断センターを対象に横断研究を実施した。2012年から2016年の間に計75,709人の参加者(研究開始時年齢18~69歳)が対象となり、長時間労働群と非長時間労働群の臨床的リスク因子を比較した。長時間労働とは、1日10時間以上働いた日が年間50日以上であると定義した。収集されたデータには、労働時間(長時間労働なし、過去または現在長時間労働あり)、身体測定(身長、体重、BMI、腹囲など)、肺機能、血圧、標準的な血液バイオマーカーが含まれている。その結果、男性の場合、長時間労働は身体測定指標(BMI、腹囲、ウエスト:ヒップ比)の上昇、有害な脂質レベル、血糖値、クレアチニン、白血球、およびアラニントランスアミナーゼの上昇と関連した。 最も関連が強かったのはBMIと腹囲であった。さらに、長時間労働の年数が増えるにつれて、身体測定指標、総コレステロール、グルコース、ガンマグルタミルトランスフェラーゼの悪化が認められた。女性の場合、長時間労働はBMIと白血球に関連した。この研究では、特に男性の場合、非長時間労働群に比べ、長時間労働群は身体測定指標が著しく悪化し、心臓代謝および炎症プロファイルがわずかに悪化した。女性についてはそのような強い関連性が認められなかった。
解説
長時間労働は過労死等(過重労働による脳・心臓疾患)のリスク因子として注目されてきた。多くの国際的な疫学研究において、週55時間以上の長時間労働は冠動脈疾患や脳卒中などの心血管系疾病のリスク増加と関連することが報告されている。本研究では、長時間労働と臨床的なリスク因子との関連性を調査したところ、男性の場合は特にBMIと腹囲との関連性が高いことが判明した。これらの指標は一般健康診断だけでなく、家庭でも簡単に測定できるため、長時間労働の健康影響を日常的に把握するのに役立つと考えられる。