女性のIT産業就労者においては、セクハラ対策が重要
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この研究から分かった事
- IT産業における精神障害においては、男女比は女性が25.2%と年々女性の割合が増えており、発症時年齢が30~40代と若年齢層が多い。
- 精神障害の要因としては男女ともに、仕事内容・仕事量の(大きな)変化が大きな要因である。
- 女性では、セクハラ・強姦等による事案が多い。
目的
過労死等で労災認定されたIT産業就労者の精神障害事案を対象に、過労死等、特に精神障害の実態や特徴を明らかにし、対策を考えるための基礎資料とすることが、本研究の目的である。
方法
2010年度から2018年度の期間における、IT産業就労者238件(男性178、女性60)の精神障害事案を対象として、性別、発症時年齢、事業場規模、職種、疾患、労働条件等一般的事項、労災認定要因及び時間外労働時間数別にデータベースを基に分析を行った。
結果
性別では、男性が178件(74.8%)、女性が60件(25.2%)であり、発症時年齢では、30-39歳が79件(33.2%)と最も多く、若年労働者の事案が多く発生していた。事案の生死に関しては、生存が187件(78.6%)、死亡が51件(21.4%)であり、決定時の疾患は、F3(気分[感情]障害)が157件(66.0%)であった。
就労者の負荷要因に関しては、「特別な出来事」の「極度の長時間労働」が全体で37件であり、また、女性では「強姦等」が5件であった。「具体的出来事」は、「仕事の量・質」の類型のうち「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が全体で87件(36.6%)であり、一方で女性では「セクハラ」が13件(21.7%)みられた。
考察
これらの結果から、IT産業就労者においては、長時間労働に関連する負荷業務などの対策及び環境変化に伴うメンタルヘルス対策とともに、女性のセクハラ・強姦等の対策の推進が喫緊の課題であると考えられた。
キーワード
IT産業、精神障害、長時間労働、セクハラ、強姦
出典
Yuki Takahashi, Toru Yoshikawa, Masaya Takahashi, Kenji Yamamoto . (2024) Characteristics of Mental Disorders among Information Technology Workers in 238 compensated cases in Japan. Ind Health. 2024 Feb 9;62(1):67-76
doi: 10.2486/indhealth.2022-0197. Epub 2023 Apr 13.