Big Fiveパーソナリティ特性とバーンアウト:システマティックレビュー

Big Fiveパーソナリティ特性とバーンアウト:システマティックレビュー
目次

出典論文

Angelini, G. Big five model personality traits and job burnout: a systematic literature review. BMC psychology, 2023; 11: 49.

著者の所属機関

LUMSA University of Rome, Italy

内容

仕事に関するバーンアウト(燃え尽き症候群)は、主として疲労感や情緒的消耗感、シニシズム、仕事への否定的な態度、職業的効力感の低下などの特徴によって定義されます。バーンアウトは個人のウェルビーイングを低下させるだけでなく、離職や欠勤、仕事のパフォーマンスの低下により、公衆衛生上のコストを増大させてしまうことが指摘されています。同一の職場環境においてバーンアウトに陥る人とそうでない人がいるかを説明する上で、個人のパーソナリティ(性格)の観点は重要です。本論文では4つのデータベース(Scopus, PubMed, ScienceDirect, PsycINFO)を用い、Big Fiveパーソナリティ特性とバーンアウトの関連について、PRISMAに準拠したシステマティックレビューを行いました。対象となったのは、1993年以降に出版された83編の論文でした。レビューの結果、神経症傾向の高さ、調和性・誠実性・外向性・開放性の低さがバーンアウトの高さと関連していることが示されました。本システマティックレビューから、パーソナリティ特性が労働者のバーンアウトのリスクと密接に関連していることが示唆されましたが、まだ検討が不十分な点もあり、バーンアウトに先行する要因を明らかにしていくことが必要です。

解説

心理学の領域では、普段私たちが「性格」という言葉で表現する個人差を「パーソナリティ」と呼びます。そして、パーソナリティについての最も有名なアプローチの一つとして、「Big Fiveパーソナリティ特性(5因子モデル)」が挙げられます。このアプローチでは、外向性・神経症傾向・開放性・調和性・誠実性の5つの特性でパーソナリティが構成されると考えています。5つの特性の簡単な説明は以下の通りです。

・外向性(extraversion):社交性が高く、会話を好み、活動的である傾向

・神経症傾向(neuroticism):不安などを感じやすく、脅威となる刺激への感受性が高い傾向

・開放性(openness):知的好奇心が高く、伝統にとらわれず、目新しさを好む傾向

・調和性(agreeableness):他者に対して協力的で思いやりがあり、競争や対立を避ける傾向

・誠実性(conscientiousness):責任感があり、規則を守り、成功のために努力する傾向

 今回紹介した論文の結果に関して、注意してほしいことがあります。まず、ある特性をもった人がバーンアウトしやすい(しにくい)傾向があったとしても、それがその特性をもった全ての人に当てはまる訳ではないという点です。すなわち、バーンアウトのしやすさ(しにくさ)はパーソナリティによって異なるものの、そこには職場環境(職場でのサポートやストレスの大きさ)などとの相互作用があることも考えられます。そのため、個人のパーソナリティを考慮して職場環境を調整する取り組みによって、バーンアウトを予防することができるかもしれません。過重労働やバーンアウトを防止するため、パーソナリティに注目したアプローチが増えていくことが期待されます。

 PRISMAPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)とは、システマティックレビューとメタアナリシスの報告における国際的なガイドラインのことです。

参考文献

1)谷 伊織・阿部 晋吾・小塩 真司 (2023). Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック : 5つの因子から「性格」を読み解く』 福村出版 (ISBN: 9784571241055)

高田 琢弘(たかだ たくひろ)
記事を書いた人

高田 琢弘(たかだ たくひろ)

労働安全衛生総合研究所 社会労働衛生研究グループ所属。専門は社会心理学、感情心理学。現在は、職場における労働時間把握方法に関する研究などに従事。主な職歴は、東海学園大学心理学部心理学科 准教授など。