長時間労働の特性とその後の心理的・身体的反応に関する研究:JNIOSHコホート研究
インフォグラフ
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この研究から分かった事
- 月平均の労働時間が長くなるほど、イライラ感、不安感、抑うつ感、疲労感などの心理的ストレス反応が高くなりました。
- 長時間労働(月45時間以上の残業)が繰り返されるほど、心理的な健康状態が悪化する傾向がみられました。
- メンタルヘルスを守るためには、総労働時間を減らすだけでなく、「長時間労働が続く頻度」を抑えることも重要であることが示されました。
目的
長時間労働が労働者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性については、これまで多くの研究が行われてきました。しかし、労働時間の測定方法の多くは本人の記憶や自己申告に基づいており、研究結果は必ずしも一致していません。
そこで本研究では、企業の勤怠記録を用いて客観的に測定した6か月間の平均労働時間と、長時間労働の発生頻度が、その後の労働者の心理的・身体的健康状態にどのような影響を与えるかを検討しました。
なお、本研究では長時間労働を「月205時間以上の労働時間(所定労働時間に加えて月45時間以上の残業に相当)」と定義し、過去6か月間の状況を評価しました。
方法
本研究はJNIOSHコホート研究の一環として実施され、日本国内の5企業に勤務する15,143人の労働者を対象としました。
研究では、
- 6か月分の勤怠記録(実際の労働時間データ)
- その後に実施したストレスチェックの結果
- 職種、雇用形態、年齢などの基本情報
を収集しました。
分析にあたっては、年齢や性別、職種、勤務条件などに加え、企業によってデータ収集時期が異なっていたことから、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言期間が含まれていたかどうかも考慮して、労働時間と心身のストレス反応との関連を検討しました。
結果
◇平均労働時間と心理的ストレス反応◇
標準的な労働時間群(月140〜180時間、週35〜45時間)と比べると、イライラ感、不安感、抑うつ感は、月180時間以上(週45時間以上)の群で有意に高くなっていました。また、疲労感、活気の低下は、月205時間以上の群で有意に高くなっていました。
◇長時間労働の頻度と心理的ストレス反応◇
長時間労働(月45時間以上の残業)が発生した回数が多いほど、心理的ストレス反応は強くなる傾向がみられました。長時間労働が一度もなかった人と比べると、イライラ感、疲労感は、抑うつ感、長時間労働が3回以上あった場合に高くなりました。また、活気の低下は2回以上、不安感は1回以上の長時間労働で高くなることが確認されました。
◇身体的ストレス反応◇
一方で、身体的ストレス反応については、平均労働時間や長時間労働の頻度との明確な関連は認められませんでした。これは、身体的ストレス反応が頭痛や肩こり、だるさなど複数の症状をまとめて評価した指標であり、個々の症状ごとの影響が見えにくかった可能性が考えられます。
考察
本研究から、平均労働時間が長くなるほど心理的ストレス反応が高まることが明らかになりました。また、長時間労働の影響は総労働時間だけでなく、「どのくらいの頻度で長時間労働が発生したか」にも左右されることが示されました。
そのため、労働者のメンタルヘルスを守るためには、単に残業時間を減らすだけではなく、繁忙期が連続しないように業務を調整し、長時間労働が続く状態を避けることが重要だと考えられます。
キーワード
長時間労働、産業保健、労働時間管理、心理的ストレス反応
出典
Ochiai, Y., Takahashi, M., Matsuo, T., Sasaki, T., Sato, Y., Fukasawa, K., ... & Otsuka, Y. (2023). Characteristics of long working hours and subsequent psychological and physical responses: JNIOSH cohort study. Occupational and Environmental Medicine, 80(6), 304-311. https://doi.org/doi:10.1136/oemed-2022-108672
