体力(心肺持久力)と心疾患発症リスクとの関係(メタ解析)
出典論文
Kodama S et al. Cardiorespiratory fitness as a quantitative predictor of all-cause mortality and cardiovascular events in healthy men and women: a meta-analysis. JAMA. 2009 May 20;301(19):2024-35. PMID: 19454641. DOI: 10.1001/jama.2009.681
著者の所属機関
筑波大学等
内容
心肺持久力(cardiorespiratory fitness:CRF)が低いと脳・心疾患の発症やそれらによる死亡率が高まるなど、CRFが循環器疾患に強く関与することは多くの疫学研究で示されている。それにも関わらず産業衛生や公衆衛生の現場でCRFが活用されていない背景には、測定技術に関わる課題(いかに簡便に、安全にCRFを評価するか)や基準値に関わる課題(健康維持に必要なCRFの値はどの程度か)があるとされる。本研究は、筑波大学の研究グループがまとめたメタ解析(一定の条件を満たす多数の論文の結果をまとめて解析し、結論を導く研究手法で、エビデンスレベルが高い方法の一つとされている)の結果で、10,679の論文から基準を満たす33の論文が選出、分析され、CRFと心疾患との関係が検討されている。解析の結果、CRFが1単位(1 MET)増加すると心疾患発症が15%軽減することや、心疾患の発症を予防するには、男性(50歳)で8 METs、女性(同)で6 METsのCRFが必要であることが示された。
解説
MET(metabolic equivalent)は身体活動の強さを表す単位であり、静かに座っている状態(安静)を1 METとしている。犬の散歩などでの歩行は3 METs(安静時の3倍)、軽いジョギングは6-7 METs(安静時の6-7倍)である。CRFを1 MET増加するために必要な体力はランニングスピードを時速1 km増加させる体力に相当する(論文内での著者らの説明)。JAMAからの発表ということもあり、CRFと心疾患との関係を明確にした研究として多くの論文で引用されている。