時間外労働が長いほど、高血圧と関連する脳深部での脳出血が多く生じていた

時間外労働が長いほど、高血圧と関連する脳深部での脳出血が多く生じていた
目次

インフォグラフ

時間外労働が長いほど、高血圧と関連する脳深部での脳出血が多く生じていた時間外労働が長いほど、高血圧と関連する脳深部での脳出血が多く生じていた

(クリックするとインフォグラフのダウンロードフォームが立ち上がります)

この研究から分かった事

・長期間の過重負荷は、高血圧が発症に関わる脳深部の脳出血発症と関連していました。

・発症6ヶ月前の平均時間外労働時間が長いほど、脳深部の脳出血発症リスクが高くなる事がわかりました。

・長期間の過重負荷による脳出血は、長期間労働による高血圧を引き金に発症している可能性が示されました。

目的

過労死等(過労に関連した脳および心臓疾患)の防止は重要な課題です。しかし、その発症メカニズムは未だはっきりしていません。例えば、脳出血には高血圧によるものと、アミロイドタンパク質の蓄積によるものがありますが、過労に関連しているのはどちらのメカニズムによるかは未だ不明です。本研究では、脳出血の出血部位に着目し、過労死等認定された事案において高血圧性脳出血のリスクが高いかどうかを明らかにすることを目的としました。

方法

脳出血を発症した過労死等申請患者(1,215人)を対象としました。長期間の過重負荷があるグループ(621人)と過重負荷がないグループ(594人)に分け、それぞれの脳出血部位を脳の表面近く、脳深部、その他に分類し集計しました。過重負荷があるグループは過重負荷がないグループと比較して、“何倍脳深部の脳出血が多いか”、年齢、性別、職種、喫煙習慣、飲酒習慣、病歴による影響を統計的に調整して計算しました。

結果

過重負荷なしグループと比べ、過重負荷ありグループでは深部脳出血の発症が1.44倍多かったです。また、発症前6ヶ月平均時間外労働時間が60時間/月未満と比べ、60-79.9時間/月、80-99.9時間/月、100時間以上/月の順に1.31倍、1.41倍、1.50倍と時間外労働時間が長くなるほど、深部脳出血発症が多いという結果でした。なお、高血圧治療中の方は、そうでない方と比べ、1.36倍深部脳出血発症が多かったです。

考察

長期間の過重負荷による脳出血は、長期間労働による高血圧を引き金に発症している可能性が示唆されました。事業主は時間外労働時間を削減すると共に、健康診断時の高血圧が適切に治療されているか確認する、産業医は長時間労働者の面接指導時に血圧を確認する等、長時間労働者の血圧管理に十分留意する必要があります。

キーワード

高血圧、脳出血、脳卒中、長時間労働、過労死

出典

Morita Y, Yoshikawa T, Takahashi M. Long working hours and risk of hypertensive intracerebral haemorrhage among Japanese workers claiming compensation for overwork-related intracerebral haemorrhage: an unmatched case-control study. BMJ Open. 2023 Sep 22;13(9):e074465. 

https://www.doi.org/10.1136/bmjopen-2023-074465


守田 祐作(もりた ゆうさく)
記事を書いた人

守田 祐作(もりた ゆうさく)

日本製鉄(株)東日本製鉄所 鹿島地区 産業医。産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学 非常勤助教。2009年産業医科大学医学部卒業。10数社の嘱託産業医を経験。現在は専属産業医を行いつつ、過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の非常勤研究員として過労死等の病態に関する研究を行っている。