トラックドライバーの健康障害と過労状態に関連する労働生活要因の検討

トラックドライバーの健康障害と過労状態に関連する労働生活要因の検討
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インフォグラフ

トラックドライバーの健康障害には、 夜間・早朝勤務への従事とその負担の重さが、睡眠や休日の質を介して関連するトラックドライバーの健康障害には、
夜間・早朝勤務への従事とその負担の重さが、睡眠や休日の質を介して関連する
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この研究から分かった事

  • 夜間早朝運転と休日の不活発な過ごし方は過労死のリスクファクターである高血圧と関連した。
  • 様々な要因の中でも、夜勤を負担に感じている人、少ない休日、休日の短い睡眠時間、睡眠不足の自覚が過労死のリスクファクターである過労と関連した。
  • 時間外労働時間や夜間早朝勤務回数、勤務日の睡眠時間といった量的指標と健康障害の間には直接的な関連は見られなかった。

目的

日本においてトラックドライバーは脳・心臓疾患による過労死や健康起因事故が多い職種である。また,トラックドライバーは,脳・心臓疾患のリスクである高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病に関連する項目の定期健診での有所見率も高い。そこで,トラックドライバーの過労死防止策の立案に向けて,職種の特徴を踏まえた労働生活条件と,脳・心臓疾患に高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病を含めた健康障害,疾患前としての過労状態との関連について検討した。

方法

全国のトラックドライバーを対象として,上記の健康障害の既往歴および過労状態を含む,基本属性,生活習慣,働き方,休み方,運転労働の負担について質問紙調査を行った。47都道府県の1,082のトラック運送事業所に 5 部ずつ合 計 5,410 部 を 配 送 し,1,992 部 を 回 収 し た(回収率36.8%)。そのうち、女性41人および性別不明 4 件を除く男性1,947人を解析対象とした。労働生活条件と各種健康障害との関連は多重ロジスティック回帰分析を用いて検証した。

結果

解析対象トラックドライバーにおいて、肥満は22。2%、高血圧症は19.3%、高脂血症は8.5%、糖尿病は5.6%、心臓疾患は2.5%、脳血管疾患は0.7%、過労状態は6.0%に見られた。多重ロジスティック回帰分析の結果、健康障害の既往歴は、運行形態が長距離 2 泊以上と地場夜間早朝、勤務日の早朝覚醒有り、休日の過し方が不活発、夜間運転の重い負担と有意な関連が示された。また、過労状態は、勤務日の中途覚醒および睡眠不足感有り、休日の睡眠時間が 6 時間未満および睡眠不足感有り、ひと月あたりの休日数が0– 3日、運転・夜間運転・作業環境の重い負担と有意な関連が示された。

考察

トラックドライバーにおける健康障害および過労状態と有意な関連は、夜間・早朝勤務への従事および夜間運転の負担が重いこと、また夜間・早朝勤務に付随する睡眠の量と質の低下に見られた。本研究より、過労死防止策を念頭に置いた勤務の改善点として、夜間運転の負担軽減や、十分な夜間睡眠取得および活動的に過ごすための休日配置の重要性が示唆された。

キーワード

トラックドライバー、健康障害、労働・休息条件、過労、夜間早朝運転、睡眠

出典

松元 俊, 久保 智英, 井澤 修平, 池田 大樹, 高橋 正也, 甲田 茂樹(2022)トラックドライバーの健康障害と過労状態に関連する労働生活要因の検討。産業衛生学雑誌 64 (1);1-11.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/64/1/64_2020-041-B/_pdf/-char/ja

松元 俊(まつもと しゅん)
記事を書いた人

松元 俊(まつもと しゅん)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究員で、現場介入調査班と循環器班に所属。専門分野は産業保健、人間工学、健康科学。主に過労死多発職種であるトラックドライバーの負担軽減策に関する研究を担当。これまで行ってきた人間工学的な夜勤・交代制勤務スケジュールの改善や睡眠を中心とした労働者の疲労回復策に関する研究の経験を活かして、看護や介護労働等における不規則勤務職場の勤務スケジュールへの介入研究にも参加。オフの時間は深煎りのコーヒーを淹れて読書をしたり、録画したテレビ番組を視聴したりして過ごしている。