RECORDsの取組み

【学会報告】第99回 日本産業衛生学会:その2

【学会報告】第99回 日本産業衛生学会:その2
目次

RECORDsメンバーが第99回日本産業衛生学会において発表

2026年5月27日~30日の4日間、大阪で開催された第99回 日本産業衛生学会において、RECORDsメンバーが登壇しました。(オンデマンド配信:2026年6月23日~8月17日(正午))

テーマ:建設現場監督の勤務・生活時間調査 ―職場環境・働き方の改善に向けてー

 【日時】2026年5月28日(木)10:10-11:00 【スタイル】一般口演
 【演者】鈴木 一弥
 【内容】建設業は、納期の厳しさや近年の人手不足の影響で多忙や休日不足が問題となっており、行政・業界での対策が検討されています。そこで、現場監督がより安全かつ快適に健康で働くことができるための職場環境や働き方の改善方策の検討を目的に、基礎資料収集のための勤務・生活時間の実態調査を行いました。2022年10~11月に15現場で働く45名を対象に14日間の活動記録を収集し、勤務内容や生活状況を分析するとともに、オンラインでグループヒアリングを実施しました。その結果、勤務日は平均2.5時間の時間外労働があり、残業の多くはデスクワークでした。勤務内容は、所長・2席では施工図作成、末席では日報や安全書類作成が中心でした。また、2週間当たり平均1.8日の休日出勤がみられ、休日が全くない参加者も存在しました。工期終盤には設計変更、事務手続きの遅れ、天候などの影響が重なり、多忙化や業務のしわ寄せが生じやすいことが示されました。今後は、図面作成や事務作業を含む残業実態をより詳細に分析するとともに、時間外労働の上限規制適用以降、各社が実施している残業削減・業務効率化施策の実施状況や効果について継続的な調査を行います。


テーマ:過労死における不整脈による院外心停止と時間外労働時間との関連

 【日時】2026年5月28日(木)14:50-15:50 【スタイル】一般口演
 【演者】守田 祐作
 【内容】過労死において心臓疾患の致命率は脳疾患よりも高く、特に院外心肺停止の死亡率は88.2%と極めて高いことが分かっています。過労死の予防の観点から、過重負荷による心停止の病態解明は重要です。そこで、心停止の病態を①心筋虚血、②不整脈、③心不全の3分類に整理し、各病態と過重負荷との関連を比較し、過重負荷によって生じる心停止のメカニズムに関する示唆を得ることを目的としました。本研究では、過労死等データベースを用いて、院外心肺停止を来した業務上事案(長期間にわたるもの)450件及び業務外事案479件を解析しました。その結果、業務上では不整脈による心停止が34%と業務外の25%と比べ有意に高いことが分かりました。また、発症6か月前の平均時間外労働時間が100時間以上の群では、不整脈による心停止が40%と、全体の29.6%に比べ有意に高いことが分かりました。さらに、年齢や職種などを調整した解析でも、60時間未満と比較して100時間以上の時間外労働群で不整脈による心停止発症リスクは有意に高い結果となりました(OR:2.12、95%CI:1.24-3.61)。加えて、心疾患既往を有する場合には、不整脈による心停止発症リスクがさらに高まりました。長時間労働が心筋梗塞発症リスクを高めることは複数の報告がありますが、本研究では時間外労働が月平均100時間を超える場合、不整脈による心停止リスクが特に高まることが示唆されました。長時間労働による睡眠時間の短縮や自律神経機能の変調が、不整脈を誘発した可能性が考えられます。また、心筋症等の心疾患既往では、不整脈発症リスクが極めて高いことから、これらの労働者に対しては長時間労働を回避する就業上の配慮が強く望まれます。


テーマ:職場Webベース運動介入における心肺持久力向上者の特徴探索

 【日時】2026年5月29日(金)9:00-10:00 【スタイル】一般口演
 【演者】村井 史子
 【内容】心肺持久力(CRF)は、心血管疾患や死亡リスクに関連する重要な健康指標です。しかし、CRFの向上に必要な身体活動量を、多忙な中高年労働者が確保することは容易ではありません。先行研究では、短時間で効率よく心肺持久力の向上を目指す高め強度のインターバルトレーニング(JHIAT)を用いたオンラインの職場運動介入を実施しましたが、参加者全体でみるとCRFの改善は限定的でした。そこで本研究では、介入後から1年後までのCRFの変化に着目し、長期的に向上した人の特徴を調べました。対象は国内企業に勤務する21名で、11週間にわたり週1回のWeb配信によるJHIATセッションへの参加と運動記録の提出を求めました。CRFの指標となるVO₂peakの変化から、介入後に向上し1年後も維持した群(A群)、介入後に向上したものの1年後に低下した群(B群)、低い状態が続いた群(C群)に分類し、セッション参加状況や日常の身体活動量を比較しました。その結果、セッション参加回数が最も多かったのはC群でした。一方、1日あたりの平均歩数はA群で介入後および1年後に介入前に比べ有意に増加し、C群では介入後に増加したものの1年後には減少、10分以上続けて行う息が弾む程度以上の活動(10min-MVPA)は、A群のみで介入後および1年後に有意な増加がみられました。さらに、介入期間中の10min-MVPAの増加量は1年後のCRF向上と有意に関連していましたが、歩数の変化との関連は認められませんでした。以上より、単に運動セッションへの参加や歩数を増やすだけでなく、一定以上の強度で継続する身体活動を増やすことが、長期的なCRF向上に重要である可能性が示されました。産業保健の現場では、参加促進だけでなく、適切な運動強度の確保や行動定着を促す継続的な支援が重要であることが示唆されました。