令和6年度 過労死等防止対策推進シンポジウム参加報告:神奈川会場
過労死等防止対策推進シンポジウムがスタート
毎年11月は「過労死等防止啓発月間」です。過労死等は防がなければならないという認識を高めるための、「過労死等防止対策推進シンポジウム」が全国各都道府県の会場で開催されます。
先陣を切って令和6年11月1日に開催された、神奈川会場のシンポジウムにRECORDsメンバーが参加いたしましたので、ご報告いたします。
◎神奈川会場:プログラム
日 時:2024年11月1日(金) 13:30~16:30(受付 13:30~)
会 場:横浜市技能文化会館 多目的ホール(横浜市中区万代町2丁目4番地7)
[開会挨拶]
[神奈川労働局からの現状報告]
[基調講演]
「疲れたら休む、休める、休ませる社会の実現に向けて」
久保 智英 (過労死等防止調査研究センター 上席研究員)
[過労死等遺族より体験談]
[企業の過労死再発予防に向けた取組事例紹介]
山岡 遥平 (神奈川総合法律事務所 弁護士)
疲れたら休む、休める、休ませる社会の実現に向けて
「疲れたら休む、休める、休ませる社会の実現に向けて」というタイトルで、日本の労働者が疲れていても休めていない状況であること、疲労から回復するには休まなければならないこと、休むためにはどうしたらよいか、という内容について久保研究員が講演しました。
日本の働き過ぎの現状の改善に向けて
日本の働き過ぎの現状を改善するには、
- 個人レベル「疲れたら休む」:効果的に休むことへの知識や行動
- 集団レベル「疲れたら休める」:職場の「空気」の問題
- 社会レベル「疲れたら休ませる」:国の制度やルール
少なくても3つの層を踏まえた「労働者の疲労回復3原則」に基づく対策の継続的な推進の重要性が説明されました。
休み方の秘訣:DRAMMAモデル
現在の疲労は精神的な疲労がメインなので、休むためにはオフには心理的にも仕事の拘束から離れている感覚としてのサイコロジカルディタッチメントが大切であり、ディタッチのためには、普段とちがう事に没頭する活動が効果的という事です。休み方の秘訣としてDRAMMAモデルが紹介されました。
また、家族の立場から疲れた家族を休ませるための手段として、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」の活用の提案、企業の立場から、疲れたら休める文化を根付かせる「参加型職場環境改善の紹介、社会レベルでの対策として、オフの量と質を守る「勤務間インターバル制度」と、「つながらない権利」の解説がありました。
講演の中では、様々な立場での対策のヒントが紹介されており、「具体的に何をしたらいいか」をイメージすることができました。また、スライドや資料は専門家でない方々にも伝わりやすい表現に工夫されており、会場からもそのような評価の声が聞こえてきました。
企業の過労死再発予防に向けた取組事例紹介
基調講演の他に、「統計データによる神奈川県内の現状の報告」「過労死遺族の体験談」に加え、過労死問題に取り組んでいる弁護士とご遺族から、「企業の過労死再発防止に向けた取り組み事例」が紹介されました。
このプログラムでは、実際に企業で発生した過労死事件について、事件の概要が非常に具体的に説明されました。過労死遺族側のお話や記事を目にする機会はありますが、企業側の対応についての報告を目にする機会は少ないため、大変興味深いものでした。今回の企業は、情報をオープンにし、トップがメッセージを出し、数値目標を設定して、事件を尊い教訓として真剣に再発防止に取り組んでいました。
大切なご家族を失ったご遺族の苦しいお気持ちを共有し、過労死を起こさない働き方を模索していく中で、企業も変化していくのではないかと感じました。是非、多くの企業にも伝えたい内容でした。
まとめ
過労死等防止対策推進法成立から10年、過労死の問題は解決していません。一方で、様々な知識の蓄積や実践がされています。今後も、スピードを緩めることなく、社会全体として取り組んでいかなければならないと感じました。
参考ページ
*講演動画
過労死等防止対策推進シンポジウムでは、いくつかの講演が動画にて配信されています。
今回ご紹介した久保研究員の講演も、過労死等防止対策推進シンポジウムのホームページにて、期間限定で公開されていますので、是非、ご覧いただき、過労死や過重労働の予防にお役立ていただければ幸いです。 動画ページ ⇒ こちら
*他会場のお申し込み ⇒ こちら
*労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト
本チェックリストについて詳しく知りたい方 ⇒ こちら