長時間労働は循環器負担を引き起こし、その負担は特に高血圧者で顕著である:実験室における模擬長時間労働による検討

インフォグラフ
長時間労働は循環器負担を引き起こすが、高血圧者はより顕著な負担が生じる
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この研究から分かった事
・長時間労働により、正常血圧者・高血圧者ともに血圧上昇等の循環器負担が生じる。
・長時間労働における循環器負担は、長時間労働の後半においては、正常血圧者よりも高血圧者の方が大きい。
目的
本研究の目的は、労働環境をコントロールできる実験室において13時間の模擬長時間労働を行い、その際の循環器負担(血圧や心臓・血管反応)を正常血圧者と高血圧者で比較する事でした。
方法
正常血圧者(安静時の収縮期血圧140 mmHg以下かつ拡張期血圧90mmHg以下)21名、高血圧者(安静時の収縮期血圧140~160 mmHg かつ・または拡張期血圧90~100 mmHg)13名が実験に参加しました。参加者は、血圧に影響を与える様々な外部要因(職場のストレスや騒音など)をコントロールできる実験室環境下で、朝9:00から夜22:00までの間(約13時間)、模擬長時間労働を実施しました。9:00~9:10の安静時(ベースライン)と9:10~22:00(12セッションに分割)の模擬労働(心理的負荷課題を実施)中に循環器負担を測定しました。この12セッションとベースラインの循環器負担指標の差分値(そもそもの血圧が正常血圧者と高血圧者では異なるため)を分析に用いました。
結果
正常血圧者、高血圧者ともに朝の時間帯に比べて、夕方以降で有意(統計的に意味がある)に血圧が高くなっていました。また、収縮期血圧は、朝の時間帯には正常血圧者と高血圧者の間に有意な差はなかったのですが、特に夕方以降(残業にあたる時間帯)で高血圧者が有意に高くなっていました。
考察
正常血圧者、高血圧者ともに、長時間労働により血圧が上昇していき、循環器負担が生じますが、その循環器負担は夕方以降(特に残業に当たる時間帯)においては高血圧者の負担がより大きかったことが示されました。
キーワード
長時間労働、血圧、実験室実験
出典
Ikeda, H., Liu, X., Oyama, F., Wakisaka, K., Takahashi, M. (2018). Comparison of hemodynamic responses between normotensive and untreated hypertensive men under simulated long working hours. Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 44(6), 622-630.