【学会報告】第98回 日本産業衛生学会:その3

RECORDsメンバーが第98回日本産業衛生学会において発表
2025年5月14日~17日の4日間、仙台で開催された第98回 日本産業衛生学会において、RECORDsメンバーが登壇しました。(オンデマンド配信:2025年6月17日(火)~7月7日(月))
テーマ:勤務時間と心肺持久力が1年後の心血管疾患リスクに及ぼす影響
【日時】5月15日(木) 【スタイル】一般口演
【演者】 村井史子
【内容】本発表では、30~60歳の労働者447人を対象に、勤務時間と心肺持久力(CRF)が1年後の心血管疾患(CVD)リスクに与える影響を検討した追跡調査の分析結果を報告しました。その結果、CRFの高低にかかわらず、勤務時間の長いことがCVDリスクの上昇と関連していることが示唆されました。CRFの高低がCVDリスクに関連を示さなかった点については、「比較的健康な参加者が多かったのではないか」とのコメントをいただくなど、今後の検討課題に関する議論を行うことができました。今後の分析の方向性についても多くの示唆を得る機会となり、引き続き長期間の追跡調査を進めることで、長時間労働や体力が健康に及ぼす影響を明らかにしたいと考えています。
テーマ:過労死等防止対策実装研究 ~カードゲーム式アクション型ツールによる運輸職場の改善~
【日時】5月16日(金) 【スタイル】一般口演
【演者】鈴木 一弥
【内容】カードワーク式のトラックドライバーのための職場改善ツールである「働きやすい職場づくりプログラム」の開発と運送会社での実践について発表しました。過労死等防止調査研究センターで継続して実施している過労死等事案の調査復命書の分析結果に基づき、過労死を起こさない安全に健康で働ける職場を実現するための6つの目標(①協力して成長できる、②睡眠・休息が取れる、③安全に働ける、④互いに尊重し支えあえる、⑤社会的責任を果たす、⑥健康で元気に働ける)を設定しました。そして、6つの目標ごとに3~4項目のアクションチェックリストを作成しました。2023年に大原記念労働科学研究所との共同研究として、グループでトランプのカードを分類するように対策を検討していくカードワーク式のツールに改良しました。取り組みをわかりやすく親しみやすくすることによる積極的な参加、集まる機会が少ないと思われるプロドライバーが比較的短時間で取り組める、といった効果が期待できます。このツールを使用したグループワークを運送会社5社で実施した結果を報告しました。ドライバーの議論が管理者の予想以上で活発であった、皆の意見がきけて良かったというドライバーの評価などの実施企業や参加者の評価が得られ、グループによる改善活動の成果が得られた例がありました。計画的な改善活動の実行やPDCA的な改善の継続をより促進する条件や方法が今後の課題です。
テーマ:道路貨物運送業における労災認定された精神障害による自殺・死亡事案の検討
【日時】5月16日(金) 【スタイル】一般口演
【演者】 茂木 伸之
【内容】道路貨物運送業は、脳・心臓疾患と同様に精神障害による過労死等の認定件数が多い業種であり、メンタルヘルス対策が必要であると考えられています。今回、労災認定された精神障害による自殺・死亡事案について報告致しました。その結果、自殺・死亡事案は全て男性でした。また、業務における心理的負荷の項目において、運転業務では出来事「強」の「仕事の量・質」が最も多く、非運転業務では「極度の長時間労働」が最も多いことが明らかになり、自殺・死亡事案は、時間外労働時間の影響が大きいと考えられました。会場の参加者からは、道路貨物運送業においての過労死等が減少する要素についての質問があり、ドライバーは運転業務だけではなく、荷の種類にもよりますが、荷扱い(荷積み・荷卸し)の時間が多い場合があるため、それが改善されれば過労死等が減少する要素の可能性になると回答致しました。引き続き事案研究を行い、成果報告を行っていきたいと思います。