病院事務局職員のための参加型職場環境改善支援ツール

病院事務局職員のための参加型職場環境改善支援ツール
目次

病院事務局職員のための参加型職場環境改善支援ツールの必要性

医療、福祉業に従事する労働者は830万人を越え、医療従事者の安全と健康の確保は重要です(厚労省2019)。医師、看護師等の医療関係有資格者等は長時間労働や不規則勤務、精神的負担等、医療労働に関連した健康障害リスクが報告され(三木ら2002,佐々木毅ら2010,日看協2018)、働き方改革でも職種に注目した取り組みが進んでいます(中嶋2019, 吉川2019, 厚労省2020)。一方、病院の運営や経営を支える病院事務局に従事する職員(以下「病院事務局職員」)の過労死等の事案は全体の4分の1を占めることがわかりましたが(過労死C 2018、吉川ら日医雑誌2019) (https://cir.nii.ac.jp/crid/1521980705059814784)、病院事務局職員の健康と安全の実態や確保策は十分検討されていません。
そこで、これまでスポットがあてられ難かった「病院事務局職員」に着目し、病院運営を支える事務局職員の過重労働を防ぎ、業務を円滑に進めることを支える参加型の職場環境改善支援ツールを開発しました。労災病院と当研究所による協働研究により本ツールの開発は進められ、労災病院などに勤務する事務職員を対象にヒアリングや質問紙調査を行い、職務ごとの負担要因や健康リスクを明らかにして、その結果をもとに「いきいき職場づくりのためのアクションチェックリスト(病院事務職場版)」を含む手引きを作成しました。

病院事務局職員のための参加型職場環境改善支援手引き病院事務局職員のための参加型職場環境改善支援手引き

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目次

 I.手引きの目的と使い方

 II.心の健康づくりと職場環境改善の意義

 III.こころの健康づくりに役立つ職場環境の進め方

 IV.病院事務局職員の職場環境改善視点 

 Ⅴ.病院事務局職員の安全と健康、円滑な業務運営の必要性

 Ⅵ.職場環境改善に用いるツール

ひと目でわかる!病院事務局職員の参加型職場環境改善の進め方

すすめ方のポイントを職場環境改善のステップ別に解説しています。

〈すすめ方のポイント〉

  • 職場環境改善ヒント集(別紙1、20 頁以降)を利用して、自分の職場の良い点、改善点をそれぞれ3 つ整理します。(最初に個人ワークをして、職場意見交換へと進めます)
  • 職場意見交換(いきいきワーク/グループワーク)では、最初に職場のよい点を職場の仲間で共有することから始めます。次は、改善したい点を意見交換します。
  • 「どこを見直せば、働きやすくなるか」「そのために自分たちでどんなことができるか」といった視点で話し合って、できるところから取り組みます。

ひと目でわかる!病院事務局職員の参加型職場環境改善の進め方

病院事務局職員の職場環境改善視点

こころの健康のための職場環境改善と聞くと、人間関係の改善や困ったときの相談窓口の設置などに目が向きがちです。しかし、職場の人たちによる参加型職場環境改善では幅広い視点で職場環境を見直します。職場環境等の改善とは、職場の物理的レイアウト、労働時間、作業方法、作業組織、人間関係などを含む幅広い視点から職場環境を改善することで、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調を予防しようとする方法です。改善の対象となる職場環境にはさまざまなものが含まれます。仕事のストレスに関する代表的な理論である「仕事の要求度-コントロールモデル」では、仕事の要求度(仕事量や責任など)と仕事のコントロール(裁量権)のバランス、特に仕事の要求度に見合うように仕事のコントロールを与えることが重要であるとされています。
ストレス予防に関する学術的な知見をふまえて開発された介入視点が下図に示した4 つの視点です。

4つの職場環境改善領域

病院事務局職員の安全と健康、円滑な業務運営の必要性

病院事務局職員の健康や労働環境に関する調査結果の概要を解説しています。

いつ、どこにいても必要な医療が受けられる日本の医療は医療従事者の長時間労働や自己犠牲等により支えられてきた側面があります。2019 年からは医療機関では医師を除くすべての職員に時間外労働・休日労働時間の上限規制が始まりました。2024 年からは勤務間インターバル規制、連続勤務時間規制、代償休息の付与、面接指導体制の強化とともに医師にも時間外労働の上限規制が適用となりました。持続性のある医療サービスと医療の質の確保の点からも、医療従事者の健康、安全、ウェルビーイングが注目されています。

職場環境改善に用いるツール

別紙1 職場環境改善ヒント集/ 個人ワークシート

別紙2 グループワークシート

別紙3 改善計画・実施報告シート

使い方のヒント

職場環境改善ヒント集/ 個人ワークシートは、管理職研修やストレスチェック結果を活用した職場改善活動の参考にすることができます。

  • 第1 章では手引きの目的と使い方、第2 章ではストレスチェック制度と職場環境改善の意義、第3 章ではメンタルヘルス一次予防策としての職場環境改善を進めるための具体的な手順を解説しています。
  • 第4 章では病院事務局職員の職場環境改善視点を紹介し、第5 章に病院事務局職員の安全と健康に関連した課題、職場環境改善の必要性を説明しています。
  • 第6 章で、実際に使用するツールを掲載しています。
  • 別紙1 職場環境改善ヒント集(アクションチェックリスト)は職場の人数分コピーして活用してください。
  • 別紙2 グループワークシート、別紙3 改善計画・報告シートもダウンロードできます。
  • これらの職場環境改善ヒント集/ 個人ワークシートは、管理職研修やストレスチェック結果を活用した職場改善活動の参考にすることができます。
吉川 徹(よしかわ とおる)
記事を書いた人

吉川 徹(よしかわ とおる)

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)のセンター長代理で、専門分野は産業安全保健学、産業医学、国際保健学。事案研究班と対策実装チームに所属。産業精神保健分野での職場環境改善とメンタルヘルス一次予防、アクションチェックリストやグループダイナミクスを活用した参加型職場環境改善、職業病・作業関連疾患の労災統計と予防策の研究に取り組んでいる。過労死・過労自殺の労災認定事案に関する調査研究と過労死等防止対策の実装にも関与している。学生時代から感染症対策と国際保健に関心があり、都立病院で多くの患者に接する中で、病気の予防のための労働生活改善に関心が高まったことが研究者となったきっかけである。