若年および中高年の交替制勤務者の睡眠・覚醒水準とウェルビーイングに及ぼす超短周期の正循環シフトの影響に関する研究

出典論文
Härmä M, Tarja H, Irja K, Mikael S, Jussi V, Anne B, Pertti M. A controlled intervention study on the effects of a very rapidly forward rotating shift system on sleep-wakefulness and well-being among young and elderly shift workers. International Journal of Psychophysiology 2006; 59(1): 70-79.
https://doi.org/10.1016/j.ijpsycho.2005.08.005
著者の所属機関
フィンランド労働衛生研究所 Finnish Institute of Occupational Health, Department of Physiology
論文の内容
交替制勤務は、睡眠・覚醒水準および社会生活における問題と関連している。若年者(45歳未満)と中高年者(45歳以上)の保守作業員の睡眠、健康、およびウェルビーイングに対する超短周期の正循環シフトの影響を、対照介入研究により調査した。当初、すべての作業員は、一つのシフトが連続する逆循環3交替制勤務に従事していた。その後、連続した夜勤シフトを回避し、各シフト間の自由時間を増やす、超短周期の正循環シフトが開発された。新しい交替制勤務スケジュールが睡眠・覚醒水準および全般的なウェルビーイングに及ぼす影響については、273人のアンケート調査と、そのうち49人の現場での活動量計による睡眠記録、主観的眠気(KSS、Karolinska Sleepiness Scale)、および反応時間検査(PVT、Psychomotor Vigilance Task)を含むフィールド調査によって検証された。反復測定データに対する線形混合モデル解析によると、新しい交替制勤務は、中高年作業員の夜勤後の主な睡眠時間を増加させ、夜勤中の覚醒水準およびPVTパフォーマンスを改善した。夜勤後の自由時間中の覚醒水準も改善し、すべてのシフト後に睡眠に関する訴えが減少した。新しい交替制勤務スケジュールを行った労働者は、旧交替制勤務スケジュールの労働者よりも、睡眠、覚醒水準、全般的な健康状態、職場でのウェルビーイング、社会生活、家庭生活に与える影響について、より肯定的に認識していた。調査終了時には、すべての作業員が新しいシフトシステムを支持した。新しいシフトシステムでは夜勤シフトの労働時間が長くなったが、超短周期の正循環シフトは、特に中高年の交替制勤務者の睡眠、覚醒水準、そしてウェルビーイングにプラスの効果をもたらしたと結論付けられた。
RECORDsメンバーによる解説
交替制勤務などの不規則な勤務への従事は、脳・心臓疾患の発症リスクを増大させることが知られており、健康障害のリスクを低減させる介入研究がいくつかあります。この研究の交替制勤務への介入では、具体的には「日日日-休休-夜夜夜-休休-夕夕夕-休休」(各シフトを3日間行った後に連休が配置される)の長周期の逆循環シフトを、「日夕夜-休休」の短周期の正循環シフトに変えています。逆循環シフトとは、「日-夜-夕」の組み合わせのように勤務の開始時刻が直前の勤務の開始時刻よりも早くなる(反時計回りの)組み合わせの交替制勤務を指します。対して正循環シフトとは、「日-夕-夜」の組み合わせのように勤務の開始時刻が直前の勤務の開始時刻よりも遅くなる(時計回りの)組み合わせになります。逆循環シフトや連続する夕勤・夜勤は、人間の生体リズムに逆らう働き方であり、睡眠時間の短縮や日勤生活への復帰を難しくする問題があります。この研究では、長周期の逆循環シフトを短周期の正循環シフトに変更することにより、睡眠、健康に良い結果が得られました。結果以上にこの研究の価値は、交替制勤務スケジュールの変更手続きにあります。新しいシフトシステムは、アンケート調査や客観的な睡眠・疲労調査を行った上で、使用者や管理者だけでなく、従業員や労働衛生の専門家による話し合いを経て開発されたものでした。このような職場の特性を踏まえた手続きによるシフトシステムの改善は、現場作業員の納得性が高く、介入研究後も新しいシフトシステムがうまく定着していたことが客観的な調査から確かめられています。