オフィスワーカーにおける座位時間・全身持久力と心血管疾患リスク・医療費との関連
インフォグラフ
(クリックするとインフォグラフのダウンロードフォームが立ち上がります)
この研究から分かった事
- 全身持久力(CRF)が高い労働者ほど、心血管疾患リスクが低いことが分かった。
- 全身持久力が高い労働者ほど年間医療費も低く、低い群と高い群では年間約77,000円の差がみられた。
目的
オフィスワーカーは勤務中に座って過ごす時間が長く、身体活動が不足しやすい傾向にある。一方、全身持久力(cardiorespiratory fitness:CRF)は、活動を続けるための体力を表す指標であり、心血管系の健康とも深く関係している。これまで、座位時間や全身持久力と健康との関係についてはそれぞれ研究が進められてきたが、座位時間と全身持久力をあわせてみた場合に、心血管疾患リスクや医療費とどのように関係するのかは十分に分かっていなかった。そこで本研究では、日本のオフィスワーカーを対象に、勤務中・休日の座位時間と全身持久力が、心血管疾患リスクや年間医療費とどのように関連するのかを調べた。
方法
オフィスワーカー1,749人を対象に、WLAQ質問票を用いて勤務中や休日の座位時間を調べた。また、年齢、性別、BMI、身体活動状況などから全身持久力を推定し、低・中・高の3群に分けた。さらに、健康診断のBMI、血圧、脂質、血糖などの情報から心血管疾患リスクを評価し、健康保険組合のデータから年間医療費を算出した。
結果
勤務中や休日の座位時間については、心血管疾患リスクとの明確な関連は認められなかった。一方、全身持久力が高い群では、低い群に比べて心血管疾患リスクが低いことが示された。座位時間と全身持久力を組み合わせて分析した場合にも、全身持久力が高い群ほど心血管疾患リスクが低かった。
年間医療費についても、座位時間との明確な関連は認められなかったが、全身持久力が高いほど年間医療費は低かった。 年間医療費は、全身持久力が低い群で約171,000円、中程度の群で約155,000円、高い群で約94,000円であり、低い群と高い群では年間約77,000円の差がみられた。
考察
今回の研究から、オフィスワーカーの健康を考えるうえでは、座っている時間だけでなく、全身持久力にも目を向けることが重要である可能性が示された。ただし、今回の研究で座位時間との明確な関連がみられなかったことは、長時間座ることが健康に影響しないという意味ではない。本研究では座位時間を質問票で評価しているため、今後は活動量計などを用いた、より客観的な検討も必要である。
また、本研究は、ある時点での体力、健康状態、医療費の関係を調べたものである。そのため、全身持久力を高めることで心血管疾患リスクや医療費が低下するとまでは断定できない。 今後、長期間の追跡調査や介入研究によって確認していく必要がある。
働く人は、一日の多くの時間を仕事に費やしており、運動や身体活動の時間を確保することが難しい場合がある。働く人の健康づくりでは、座る時間を減らすことに加えて、日常的に体を動かし、全身持久力を維持するという視点も重要である。
※全身持久力(CRF)とは、活動を長く続けるための体力を表す指標であり、「心肺持久力」とも呼ばれる
キーワード
心肺持久力、心血管疾患リスク、医療費
出典
Rina So, Fumiko Murai, Manabu Fujii, Sanae Watanabe, Tomoaki Matsuo.Association of sitting time and cardiorespiratory fitness with cardiovascular disease risk and healthcare costs among office workers.Industrial Health. 2023;61(5):368–378.
https://doi.org/10.2486/indhealth.2022-0010
